
第594号
加 齢 に よ る 衰 え と は !
2016年11月1日
AAC会員
鎌苅 滝夫氏
現在の私の年齢は68歳5ヶ月。先般義母が90歳で亡くなり、親戚では92歳の義父、
83歳の叔母に次いで3番目の年寄りになった。60歳を迎えた頃から体力の衰えを
感じ始めたが、65歳を過ぎてからはさらに一段の体力の低下を実感している。
年1回の人間ドックの検査の結果は、すべての数値で正常で問題はないが、マラソン
のゴールタイムは毎年悪くなってきている。加齢による衰えを日々感じるこの頃であ
るが、今回のコラムでは、この加齢による「衰え」ついて考察したい。
まずは心肺機能について。
心臓は筋肉できた器官で血液を循環させるポンプの機能を有しているが、加齢ととも
に心臓や血管が固くなり心拍数が少なくなり、血液を全身に送り出す量が減少するこ
とになる。機能的には通常時は問題ないが、若い時と違いが明らかになるのは、心
臓が激しく動き、多量の血液を送り出さなければならない場合、つまり運動時である。
高齢になると心臓は若い人に比べ速く打って、多くの血液を循環させることができなく
なる。この最大心拍数の減少が、運動能力の低下を招くことになるのであるが、定期
的な有酸素運動によって、衰えの速度を遅くすることは可能である。
ところで、アスリートに多く見られるスポーツ心臓について付言しておこう。スポーツ心
臓は明確な定義はないが一般的には安静時心拍数が40~50程度の場合であると
される。普通は心拍数50以下の場合は、「徐脈性不整脈」の可能性が検討されるが、
継続的なトレーニングによる心臓の筋肥大となっているスポーツ心臓は、一度の収縮
作用で肺を通じて酸素を取り込んだ血液を大量に送り出すことが可能となるのである。
次に肺機能であるが、加齢とともに肺活量が減少してくる。肺活量の低下は、呼吸運
動を行っている肋間筋や横隔膜の筋力低下により、引き起こされるものである。肺活
量は個人差があるが、男性は3000~4000、女性は2000~3000と言われ、いず
れも20歳代がピークであるが、30歳以降徐々に低下を始め、60歳代にはピーク時
の70%弱になる。人は呼吸により空気を吸い込み、血液中に酸素を取り込んで、こ
の酸素を利用して糖分や脂肪を分解して、運動エネルギーを獲得する。また、加齢と
ともに肺胞数と肺毛細血管の減少も見られ、したがって吸い込んだ空気から取り込ま
れる酸素量も減少することになる。
このように加齢による心臓と肺の機能の低下により、運動エネルギーの形成に大きな
マイナスの影響をおよぼすことになる。加齢による心肺機能の低下を止めることは不
可能であるが、生活習慣や食習慣、特に過度のアルコール摂取の抑制、そして継続
的な運動により、その衰えの速度を遅くすることはできる。
次に骨と関節について。
腸管からのカルシウムの吸収が悪くなって骨密度が低下し、骨がもろく、弱くなって骨
折のリスクが高くなる。関節は、長年の使用による消耗・摩耗により軟骨部分が薄く
なり、スムーズな動きが阻害されることになり、さらには関節そのものが変形すること
もある。
骨と筋肉を結合する腱や関節同士を結合する靭帯は、弾性が低下してくるため、柔軟
性が失われてくる。腱や靭帯の損傷やこれに付随するケガや故障も、年を取るととも
に増えてくるのである。
筋肉量と筋力ついても、加齢による減少が見られる。筋肉量は30歳前後がマックス
といわれ、その後は減少が始まり、生涯続くことになる。75歳までに、若い頃の半分
になる。個人差はあるが、30~40%程度まで減少する場合もある。筋肉には速筋と
遅筋の二種類あるが、速筋の方がより多く失われるので、長距離ランナーが持久力
よりもスピードの衰えを感じるのは、このためである。
筋肉と筋力の減少を抑え、その進行を遅らせるためには運動が必要である。激しいト
レーニングではなく、継続的な運動が求められる。筋肉量が減少すると基礎代謝量も
低下することになるが、このためカロリー消費量の減少となり、体脂肪の増加につな
がり、太りやすくなる。体脂肪の増加は、運動にとってはマイナスであることはもちろ
んのことであるが、糖尿病や高血圧など健康上の問題が生ずるリスクの増加にもなる。
人の命は限りがあり、年齢を重ねるとともに身体のあらゆる機能の低下は免れない。
しかし、運動能力や内臓機能を維持し、その低下の速度を遅らせることは可能である。
年齢を考えたバランスの取れた食事、ストレスをためない快適な日々の生活の確保
に努めること、もちろん継続的な運動を行うことは、論を待たないところであろう。
本コラムでは、運動能力についての衰えを考察したが、内臓の働きや知的・精神的な
働きの低下も顕著に現れる。それらに関しても機会があれば記載したいと思っている。
私自身は、医学的、あるいは解剖学的な学問に関しては門外漢であるが、今回の記
述は、ほとんどは書物を通じての知識をもとにしており、誤解や曲解、あるいは風聞な
ど多くの誤謬を含んでいるかもしれませんが、ご指摘の上、正しい内容を示して頂け
れば幸いと思っております。