
2005年9月4日 清水正博
私は21年前に兵庫トライアスロンクラブの結成に参加し、震災後は年に一度ロング・タイプを健康管理を目的に続けています。今回は生涯スポーツとしてのトライアスロンについて日ごろ考えていることを書いてみたいと思います。
会員の方も競技目的、健康目的と取り組み方は様々だと思います。しかしトライアスロンを知らない一般の人は、トライアスロンは過酷で健康に良くないと考えている人が多いようです。ですから生涯スポーツなんて言っても、イメージできない人が大半です。
しかしどうでしょう。最近話題の三浦敬三さんも100歳でスキーを楽しまれていますが、100歳に近い高齢者で走る人、泳ぐ人、自転車に乗る人が時々話題になることがあります。ですから私の考えているトライアスロンも、こんな感じで3種目を楽しんで続けられたら無理ではないと思うのです。
震災の前までは、タイムや順位にこだわり、練習に時間をとって無理をしていました。今から考えると、自分の身体を随分酷使していたと思います。震災のお陰で生活が変わり、その為に競技志向が排除でき、マイペースでレースを楽しめるようになりました。
勿論、この境地に到るまでには長い時間を要しました。例えば練習の時は大して水や食料を摂らないのに、競技の時は過食していることに気付きました。それは不安やストレスに起因していた訳ですが、それに気付いて随分楽になりました。水分摂取は喉の渇きを感じるまで控え、補給も少し空腹感が起こるまで抑え、頭ではなく体の声を聞くようにします。
また練習できなくて不安を感じる時は、完走できなくても良いじゃないと居直ると楽になります。宮古島大会の場合は14時間を一杯とってゴールするように時間配分すると、後方を走っていても気にならず、亀さん気分でいられます。正しいリズムやピッチを守って、リラックスして自分を見失わないことは、すなわち座禅や瞑想の境地かもしれません。
こうしたことは会社や家庭の仕事や日常生活でも生かすようにしていますが、これはトライアスリートだからこそ得られる「生活の知恵」だとトライアスロンとの出会いに感謝しています。
(ナンバについて2)
2005年10月13日 清水正博
このテーマで書き始めた矢先、第2回の淡路大会で死亡事故が起こってしまいました。亡くなられた方は健康のためにトライアスロンに挑戦された訳ですから、ご本人が一番無念であったと思い、思い出すたびご冥福をお祈りしています。
私がトライアスロンを始めた頃は、大会に申し込む際に必ず医師の診断書を添えていましたが、徐々に形骸化してしまいました。大会当日にベストの状態に持っていける人はほんの少数でしょう。私自身、21年間の中で何度も命拾いしたことがありますし、そのことを思うと生かされていると感謝するしかありません。
4年前にニュージーランドのアイアンマンに参加した際、大会3週間前に2人の方が現地で自動車事故で亡くなったというニュースを聞きました。現地での練習時も大型トラックがスピードを落とさず追い越す度に命の縮む思いをし、恐くて練習する気が失せました。
それでも、やはり私にとってトライアスロンは生涯スポーツです。3つの種目を安全に気持ちよく完走した時の満足感、それに至るまでの練習の日々が健康なライフスタイルを築くための知恵となり、生涯元気で過ごす意欲を高めてくれます。
50代以上の仲間には、記録にこだわる人と完走を楽しむ人の2タイプがあります。前者は練習量が多く、怪我が多く、引退を口にすることもあります。後者は旅を楽しむ口実としてトライアスロンを行い、練習も必要最小限に留め、事故防止にも努めています。
私自身はヨガや神道夢想流杖道といった古武道にも取り組んでおり、そこから得られる身体操作がトライアスロンにも役立っています。すり足、ナンバ歩き、胆力、胴体力、間合いなど、共通する知恵が多く、続けるほど楽しさが増します。次回はそうしたナンバについて詳しく書いてみたいと思います。
(ナンバについて3)
2005年12月5日 清水正博
兵庫県トライアスロン協会副理事長 / 健康道場「サラ・シャンティ」道場主
「ナンバ歩き」についての誤解と真実に迫ります。
図1にあるような、右手と右足を同時に出す姿勢は、写真家がポーズを取らせて撮影したもので、実際に走っているわけではないことが多いようです。図2のように、絵で描かれた飛脚の姿には自然な動きがあり、右肩に文箱を担ぎながら左足を前に出すという自然なフォームが描かれています。
「ナンバ」とは本来、右手右足を同時に出すのではなく、「右半身(右肩・右腰)と右足が同時に出る動き」です。現在のトップアスリートにも見られるような、腰を捻らない走法や手を大きく振らない走り方にもその影響が表れていると考えられます。
斉藤孝の「呼吸入門」などに紹介されるような、帯や腰巻きといった日本古来の身体文化も、このナンバの考え方と深く関わっています。現代では衰退したように見えますが、注意深く探せば、今でも多くの知恵が身近に残っています。
腰帯の位置を正しく保つためにはナンバの動きを習得することが有効です。また、丹田呼吸法による長く深い呼吸が自律神経を整えるなど、健康への効果も大きいです。
ナンバを体得するには、袴を着て太刀を腰に差し、自然な姿勢で歩いたり居合いの練習をするのが良い方法です。武道においても、正しい身体の使い方を習得するためには、このような古来の身体法を見直すことが大切です。

