トランスエゾ!(連載その3)

特集第8号(連載その3)
2007年11月17日
芦屋浜アスリートクラブ
会員:奥 幸二氏

襟裳岬を出発して100人浜まで日本離れした絶景の連続。ちなみにこの浜の名称はある藩の武士を乗せた船が漂着して飢えと寒さに苦しんでほとんどが死んだのを地元の人が石を置いて弔ったということから由来している。ここから黄金海岸を延々と走るが景色は最高である。黄金道路は名の通り黄金を並べたように金がかかったからである。今はここではちょっと不要なんでは?というトンネルも来る毎に増加している。宗谷への初日、通算8日目は最初の7日間と比べかなり暑いが順調に推移。この日は歴戦の方々はエゾはこれぐらい暑くなきゃーエゾらしくないよねー、と余裕であった。こちらもコンブ乾しの人といろいろ話す余裕でコンブをもらう。日高山脈、狩勝峠越えは自転車には厳しかったがアスファルトなのでまだまし。それでも2人とも、ほとんどを立ちこぎで峠まで行ける元気があった。峠ではランナーはコーラかビール飲んでお終いだけど、子供用自転車の平均進行速度は時速10キロであることがはっきりしてきた。(ロードバイクならゆっくりしても20キロは出るだろうけど子供用は平均にすれば10キロしか出ない。)峠で写真撮ったり景色の鑑賞したり狩勝そばもいただく余裕。今日は更に1段と暑いので子供の熱中症予防の為にも10分休息を取る。そのずっと先のスイカ峠は午後2時半までに入らないと熊が出るのでリタイア扱いとなる。途中の駅前の田舎雑貨店はリタイアには好都合な場所2箇所の内の1つ。この雑貨店はここでは100貨店と称しているのだ。駅前って言っても都会とは違い、この店以外何も無いのである。ここに視覚障害の宮本さんと貝畑さんが列車待ちしておられた。(列車はめったに来ない。)この厳しいレースを全盲でもチャレンジされ、またその伴走をされるのに敬意を表したい。お2人とも逆に私等によく気を使って下さりアイスキャンディまでいただく。宮本さん喘息が出てきてピンチだったのだ。蛸ねえさんも暑さのせいか胃が何も受け付けずここでリタイア。普段は豪快で鳴らす蛸ねえさんにしてこれだからいかなる暑さか想像がつくというものだ。ちなみに私の携帯用温度計は40℃をオーバーしていた。太陽を浴びるともっと暑いのだ。まさにサウナ風呂内でのランニング状態となった。給水ポイントは意外にないのだ。だから多目に持って走るので余計に消耗するのだ。この暑さでは頭からかぶる水も必要。皆さん氷を買って袋を巧みに頭や首、背中に巻きつけられてました。スイカ峠入り口はギリギリ2時10分通過。あまりの暑さで間に合いそうにないランナーもいる。しかしアッシー、徹ちゃん、ナミさんは強い!(同じ日に萩の250キロと70キロをやるサイボーグみたいな人)底なしの強さと実感!しかしさすがにこの暑さには閉口している。長老の髭カクさん、青木さん(サロマ年代別チャンプ)、頼さんも強い!女王の中村さんも強い!サハラの王者I君も強いがダメージがかなりあるようだ。坪内さんもいい試合運び。Y本さんはかなりのダメージに耐えている。弟の兄さん、あんころさんも苦戦しながらも頑張っている。藤井さんもサブ伴走として頑張っている。まさにサバイバルになってきた。スイカ峠は熊もさることながら異常気象のせいかアブが大量異常発生しており、自転車こいでもタイツや服の上からドンドン刺してくる。たった3~4センチの同じ部位に同時に3匹4匹が吸い付くのだ。こいつに刺されると蚊と違って跡が腫れて数日は辛いのだ。この峠は通行の少ない砂利道なんで、重すぎる特殊ママチャリは乗って通過できない。乗るとパンクするからだ。パンクはそのままリタイアの危機だ。従って押して歩くのだが、当然普通の歩きより遅い。アブが何10匹とまとわりつくインディアン風襲撃はすさまじく、熊がいるから離れるなというのを無視し(熊も恐がってたのに)勇樹は悲鳴を上げて私をほったらかして自転車で逃亡。(勇樹はものすごい虫嫌いなんである。ましてアブの猛烈な襲撃だ。後で熊よりアブの方が恐いと云ってた。)払いのけてもたたきつぶしても次から次へと波状攻撃してくる。こちらは自転車押すしかないので勇樹を追いかけたいのを辛抱する。やっとこさで麓の舗装道路に出ると勇樹が幽霊みたいにボーゼンと自転車放り出し立つている。そういえば途中にペットボトル2本などが散乱していた。落ちても拾いに戻る子なのにどうしたのかと思っていた。オックスフォード生地の頑丈な服がズタズタに腕やお腹部他が大きく破け血だらけ。足はハーフタイツだったので土や小粒の砂を刷り込んだかのように無数の傷の中に入り込んでいる。右腕付け根の肋骨の皮の上も相当なダメージ。腹部も青じみ結構出血。特に肋骨は少し押すだけでモーレツに痛がる。ヒビぐらいは入ったかと思わせるレベル。そこも内出血。(私も過去2度自転車で肋骨折ってる。)口からも血を流し口腔内を切っている。首からぶら下げてた布製ペットボトルケースもズタズタになった。自転車も変速機等にダメージ。なんとか直る。アブから逃れるのに転倒ポイントから遠くまで自転車を引きずってきたのだ。恐さのなせる火事場のバカ力だ。これが母親の伴走ならここでリタイアになったかもしれないなと、今冷静に振り返れる。勇樹にどうだまだ行けるかと話しかけると、ボーゼンとしながらもゴールしたいんだというではないか。しかも泣いていない。1リットルほどの清水で傷口を洗い、土を爪でほじくり出し(痛かったろうなー。)救急用イソジンで消毒。ティッシュとキネシオテープで傷口を保護する。勇樹のファイティングスピリットでピンチをかわす。途中何度もアチコチ痛がって小休憩しながらヨレヨレでゴール。このファイトには私も心底感動した。TO襟裳3日目には些細な事でもうリタイアしたいよう、と云った同じ子供とはとても思えないのだった。私が無理やり引っ張って行こうとしたのでなく、勇樹がただひたすらゴールしたいという想いを持ち続けたのだ。これは皆さんが猛暑の中、いかに悪戦苦闘してるかを嫌でも観察せざるを得なかったからだろう。この日はかくしてリタイアの最大のピンチを脱したのだった。ほとんどのランナーも今日のダメージは大きい。みんなボクシングでいえばカウント8のダウン次の回はノックアウトのピンチだった。

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