
第213号
「(元)プロ・トライアスリートのIRONMANエイジ出場問題」
について考える!
2010年4月27日
愛媛県在住
内藤 聡之助氏
今年6月のアイアンマン・ジャパン参戦を予定していた有名トライアスリートの「Fさん」
が、参加出場の申し込み手続きを済ませた後に「縁がなかった」といって出場を辞退
されたそうです。
これと関係があるのかどうかは不明ですが、それより少し前に、あちこちのトライアス
ロン関係のブログで「アイアンマン・ジャパンに、プロ選手がエイジ・カテゴリーで参戦
するようだ」といった記載を目にしました。「F選手以外のプロ選手もエイジ・カテゴリ
ーに名前がある」との記載も見ましたが、私にはそれがいったい誰を指しているのか、
名簿を見てもよく分かりませんでした。
これらのブログ内には、その是非についての記述はありませんでしたが、「プロ選手
がエイジで出てくる」という事態を大分意識していることが感じ取れました。特に「知り
合い」という仲でもないのですが、Fさんの久々のアイアンマン出場は今年初めに本
人から聞いておりましたし、40歳代後半にもなるオッサンがどれほどのパフォーマン
スを見せてくれるのかとても楽しみにしていましたので、出場辞退のニュースを非常
に残念に思いました。自分は、もともと「Fさんを気持ちよくエイジで出してあげたらい
いのに」と思っていたのですが、強豪エイジ選手の心情は複雑のようです。
そこで、(日本の)プロ・トライアスリートの定義と彼らのレース参戦の可否というか是
非について、きちんとオツムを整理しておく必要があるのではないかと感じて皆さん
に問いかける次第です。
さて、上に記した「ブログ」をみて即座に思ったことは、同じエイジグループでハワイ出
場を目指して参戦する選手や、エイジ・カテゴリーでトップを争う選手にとって、思いの
強弱こそあれFさんのエイジ出場は、自分の順位がひとつ下がってしまう可能性が高
い「困った事態」と感じているだろうといことでした。特に、ハワイ出場権のボーダーラ
インにいる選手には、非常に困ったことであります。同時に思ったことは「F選手はは
たして現在もプロなのか?プロ・カテゴリーでなくては彼はI.M.
Japanに出場できない
のだろうか?」という疑問でした。
この問題に類似した事例があります。かつてJTRC(JapanTriathlonRacingClubの
略)に所属し、ITUのW.C.シリーズを転戦したり、宮古島大会などでも長年上位入賞し
ていたS氏。彼は、30歳代に入って第一線から離れた後の数年間、I.M.Malaysiaのエ
イジ・カテゴリーに出場して、度々ハワイの出場権を獲得しておりました。現在は40歳
代となり、今年はIM.Chinaにエイジ出場しましたがハワイ出場権は残念ながら獲得で
きませんでした。おそらく、一般的にはS氏はプロ(引退宣言していないから?)、もし
くは元プロと認識されているでしょうが、「では現在、彼は本当にプロか?」と問われて
「Yes」と答えてその理由を説明できる人はいないでしょう(しかし、S氏は、ほんの数
年前に某有名ショップのブログで「プロはエイジ出場するな!」と実名でコキおろされ
ていました)。
国内では有名な東京に拠点を置くトライアスロンのクラブチーム「V」。国内トップ選
手を要して、平日でも合宿を組んでトレーニングをするこのチームに所属するT君が、
今年のIM.Malaysiaのエイジ・カテゴリーに出場してハワイ出場権を獲得しました。国
内のレースでは「エリート部門」に出場している彼は、ひょっとすると「若手プロ選手」
と認識している人もいるでしょうが、「まだ実力的にはプロじゃないっしょ!」と反論さ
れる方もいるでしょう。いったい、プロトライアスリートの条件・定義というのは、ナンな
のでしょうか?
我々ニッポンの一般エイジ選手が抱く「日本の」プロ・トライアスリートのイメージという
のは、大体以下のようなものかと思います。
1,生活の主な収入源は、トライアスロン大会で得た賞金か、トライアスロン
関係のスポウンサー料(この場合、現金収入を指す)である。
2,本業がトライアスロンと直結もしくは種目に関係したもので、
コーチや指導等で収入を得、他者の支援を受けつつレースに
参戦している。
3,実業団か、それに類するクラブチームに所属し、そこから支援
を得てレースに参戦している選手。
「他者からの支援を得てレースに参戦している」ことをもう少し広げて考えた場合、
5.レース機材やウエアの資材供給を受けている選手
6.(職場以外の)練習環境を無料で使用させてもらっている選手
支援額の大小はあれど、メーカーやスポーツクラブ等から、いわばレース参加費・遠
征費、ウエアや施設使用料を肩代わりしてもらっているといえます。そこまで広義で
考えると、彼らも「プロ」もしくは「セミプロ」、「みなしプロ」と言えるのかもしれません。
さらに拡大解釈をして極論を言うと、
7.バイクショップやスイミングクラブでバイトなどで短時間働き、
ほかの時間は練習三昧の生活
なんてのも「あんた、プロとちゃう?」と思えてしまいます。
これらが「プロ」と言えるかどうかは別として、「プロの定義」を色々と考えて当てはめ
てみると、エイジグルーパーと言われる選手の中にも、意外とセミプロみたいな人が
いると思います。一方、「プロ」と断定されたFさんは、必要最低限の生活費を夫婦で
稼ぎながらトライアスロン教室のお手伝いなどをし、大会では「招待選手」として参加
してもいます。こんなエイジグルーパーなど、その辺にごろごろいるのに一般的な扱
いは、なぜか別のようです。
「プロ・トライアスリート」をそれらのような曖昧な定義で認知しようとすると、プロと認
識されている選手は「間違いではない」といえると同時に、今度は現時点でエイジで
出場している選手でも、「おまんはプロじゃろうが!」と言われてしまうひとも大勢でて
きます。事ほど左様に、少なくとも日本国内において「プロのトライアスリート」の定義
は非常に曖昧というか、無いに等しいように思えます。そもそも、日本のプロ・トライア
スリートというのは「明日から自分はプロになりま〜す!」と自分で宣言しただけに過
ぎないものだったと思います。他に何か定義があったような記憶がありません・・・。
「日本のプロトライアスリート」は、自称プロ宣言した彼らの生活様式の共通点を取り
上げて、彼らを含めたこの業界(?)が勝手に作り上げたイメージだけなのではないで
しょうか?
●閑話休題。
ここではハワイへの出場権が限定されているIRONMAN出場者を問題にしているの
で、WTCや海外におけるプロトライアスリートの定義について考えてみます。
WTC(worldtriathloncorporation:世界のIRONMAN大会の元締め)では、「IRONM
ANレースのプロ・カテゴリーに出場する選手は、WTCでプロ登録しなければならない
」という条件があります。
プロ登録しなければ、どんなに強かろうが早かろうがWTCは「ノンプロ」=「エイジ・グ
ルーパー」扱いになっちゃうみたいです。
一方、51.5qのレースが中心の世界的組織ITUはどうなのでしょうか?(JTUもそう
ですが)。こちら主催の世界規模のシリーズ戦では、特に「プロ」という名前のcatego
ryはなく、「エリート」という表現になっています(日本国内で同様ですね)。この「エリ
ート部門」に出場するのに、「プロであること」の条件があるのかどうかは分かりませ
ん(たぶん、ないように思います)。
すると、プロトライアスリートというものは、WTCにプロ登録した選手以外に「プロ」と
呼べるトライアスリートは定義上存在しないことになります。多くのエイジ選手が「プロ」
と思っている選手たちは、「引退宣言」しようがしまいが、実は最初から「エイジグルー
パー」ということになります。たとえプロ登録していたとしても、「今年からはもうプロ登
録しない」となったらノンプロ(?登録しないだけですが)となってしまいます。
少なくともIRONMANRaceにおいてはFさんもSさんもTくんもみな「ノンプロ」=Age
categoryで問題ないようです。
とはいえ、先にあげた「ハワイ出場権のボーダーラインにいる選手」や、トップ・エイジ
選手にしてみれば、「だからといってねぇ、つい2〜3年前まで(自称?)プロだった選
手が、いきなりエイジ出場してハワイ出場権を取っていかないでよ」といった感情が出
てくるのも当然でしょう。
しかし上記のとおり、「去年まではプロ登録」選手のレース参戦を止める権利はない
わけですし、有名選手が年齢を重ねてもレースに参戦して勇姿をみせてくれるのは、
それは嬉しいものです。今後、元プロのFさんやSさんだけでなく、現在は現役バリバ
リの選手たちも含めて、最盛期を過ぎて50歳になっても60歳になっても、末永く笑顔
でIRONMANに限らず地方のレースでも気持ちよく出場できるような業界環境になっ
て欲しいものです。エイジ・グルーパーの我々も、そのように意識しすべきではないか
と思う次第です。
【提案】
「プロトライアスリート」=(所定の競技団体に)プロ登録した選手と規定し、「かつてプ
ロ登録していた選手は、IRONMANのエイジ・カテゴリーに参戦することは認めるが、
プロ登録最終年から●年間はハワイ出場権を与えず」くらいの基準をもうけることで
解決してはどうかと思います。
他のレースでは、いまの所「エリート」でナンも問題ないようですが。
皆さんはどうお考えでしょうか?