
第574号
つれづれに思いつくまま(2)
===ウェーブスタートとネットタイムの導入を!===
2016年8月2日
AAC会員
鎌苅滝生氏
近年のマラソンブームは東京マラソンの開催がきっかけである。東京マラソン以降の新
規大会はほとんどが都市型マラソンと称せられ、定員は一様に1万人以上である。また、
従来から開催されている多くの大会でも定員の増加が行われてきた。
大型化する一方のマラソン大会の会場規模や道路幅から考えて、ウェーブスタートを広
く採用すべきと考える。私がウェーブスタートを推奨する理由は、前回のコラムで昨年の
つくばマラソンで導入されたウェーブスタートを紹介し、その効果とメリットを明らかにした
ことでおわかり頂けるものと思う。
一方、この方式には問題点もあることは事実である。まず、交通規制の時間が長くなり、
地域住民の通行制約の強化による日常生活・経済活動への影響が大きくなるという点
であろう。しかし、もとよりマラソン大会は地域の理解と協力なしには開催しえないもの
で、大会主催者による真摯な取り組みとより一層の地域社会への貢献への工夫とアピ
ールが求められるであろう。
交通規制の必要のない河川敷で開催される大会にはこの制約はないので、該当の大
会での早期の導入を望みたい。私が参加経験のある大会では、板橋Cityマラソン(旧
荒川市民マラソン)や筑後川マラソンはともに参加人数に比べコース幅が狭く、安全性
の確保の面から問題ありと思われるので、検討頂ければと思う。
もう一つの問題点として、順位の把握が難しいことがある。極論すれば、すべてのラン
ナーがゴールするまで最終的な順位が確定しないのである。そのため、当日の順位入
りの完走証の発行が困難となる(遅くなる)。
課題はあるもののメリットの大きさを考えると、ウェーブスタート方式の導入がされるべき
だと判断できるが、それが実現しないのは何故であろうか。 「昔からのルールだから」、
「前例がないから」、「技術的に難しいから」などの理由であろうか。ルールが変更でき
ない理由はないし、前例は海外にいくらでもある。技術的に複雑で煩雑とは考えられな
い。大会の現状の問題点を正しく認識し、より安全で合理的な運営を行うことは主催者
の責務である。
ウェーブスタートの導入を困難にしている大きな理由の一つには、フィニュッシュタイムに
対する考え方にあるのではないかと考える。つまり、グロスタイムを公式とする現状であ
る。世界的には、エリートランナーの大会を除くとネットタイムを正式なタイムとして採用
する大会が主流となっている。ところが日本では、正式なタイムとはグロスタイムことで、
ネットタイムはあくまでも参考タイムの扱いである。完走証にネットタイムが記載されない
大会すらあるのが現実である。
グロスタイムは計測開始時刻がすべてのランナー同じで、「着順イコールタイムが早い
順」であり、ゴールした人から順番に順位が決定される。ウェーブスタートだとこれが無
理となる。グロスタイムの大きな問題点は、号砲が鳴ってからスタートラインにたどり着
くまでの時間がフィニュッシュタイムに含まれてしまうことである。大規模な大会において
は、最大で20~30分のロスタイムが発生することもあるが、自分の走力ではコントロ
ールできないこの時間が公式タイムに含まれているという不合理を享受させられている
のである。
芦屋浜アスリートクラブの宗政会長は、かねてよりグロスタイムの問題点を指摘し、ネッ
トタイムを公式完走時間とすべきと主張されていることは周知の通りで、その詳細はAAC
ホームページの「これでよいのか?公式完走時間!」としてアップされているので、改めて
参照願いたい。
グロスタイムにこだわるあまり、スタートラインに達するまでのロスタイムをできるだけ短
くしたいとの思いで、少しでも有利な位置からスタートできるようにゴール予想タイムの
虚偽申告が多くなる、あるいはスタート前の整列時割り込み行為が発生する。スピード
の異なるランナーが混在することになり、安全性にも問題が生ずることになる。ウェーブ
スタートを導入してもロスタイムの発生はあるので、グロスタイム=公式タイムではウェ
ーブスタートの効果は薄れてしまうのである。ネットタイムが採用されれば、大幅なサバ
読み申告や無理な割り込み行為は、まったく意味のないことになる。
つまり、ウェーブスタートはネットタイムと同時に導入されることにより、虚偽申告の減少
が期待され、安全性の確保が高まるという最大の効果が現出するのである。
一方、ウェーブスタートにすればスタート直後の混雑緩和やエイドステイションでの混乱
減少による時間の短縮が可能となり、ランナーのより正確なまさにネットのゴールタイム
が記録されることになり、マラソンへのモチベーションも高まることとなるのである。
私の推奨する結論は、スタート時の混雑が緩和され安全性が高くなること、ロスタイム
の圧縮によるランナーの真の実力が記録されることになること、そして世界的にも潮流
となりつつある 『ウェーブスタートとネットタイムの同時採用を!』 である。