
第622号
つれづれに思いつくまま(5)
===脱水症と熱中症について===
2017年8月4日
AAC会員
鎌苅 滝生氏
気温が上昇し、日中、ランニングなどの運動を行うと発熱し、体温が上がる。体温、
特に脳の温度を下げるために汗をかく。気化熱を利用して体を冷やすのである。
発熱量が多くなる夏場は大量の汗が出るため、水分の補給が的確に行われないと
脱水症に陥ることになる。人間の体は、成人で約60%が水分から成っているが、加
齢とともに水分が少なくなり、65歳以上になると50%程度になる(新生児は70~
80%)。老人が脱水症になりやすいのは、水分の絶対量が少ない状態になっており、
少量の発汗による水分の減少でも脱水となるためである。脱水症状になると、その結
果、血液の量が減り、血圧が低下し、脱力感を感じたり、脚がつったり等の症状が出
る。この脱水症が熱中症のさまざまな症状を誘発するのである。
ランナーでもある筑波大学の長田道夫教授によると「脱水症と熱中症は分けて考え
る必要がある」という。水を飲むと脱水症は改善できても熱中症を予防できるとは限
らない。また、水を飲むことで低ナトリウム症を誘発することもあると指摘する。
熱中症とは、体温上昇による「熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病」4つの健康障
害の総称である。頭痛、吐き気、さらには失神、けいれんなどを起こすことになる。
熱中症の予防には発汗が不可欠であるが、十分な速度で汗が蒸発しないと冷却機
能が効率的に機能しない。気温が高くなくても、多湿や無風の場合、冷却が間に合わ
なくなり熱中症にかかることがある。 熱中症対策として「十分な水分補給」とよく言
われるが、汗腺が発達していなければそれも有効ではない。
ランナーに求められることは、暑さに慣れるとともに、十分な練習を積んで汗腺を活
性化させて、多量の汗をかく必要がある。体温を下げるには、速乾性のシャツの着用
は汗の蒸発を促すことができ有効であるが、体温を低下させるには頭や首、太ももに
直接水をかけるのも効果がある。
気温の高い時期のランニングでさらに注意しなければならないのが「低ナトリウム血
症」である。大量に発汗すると水分とともにナトリウムも失うことになる。そこで脱水
症状を防ごうと水を飲む。気温が高いときは冷たい水がおいしくてたまらなくついつい
過剰に水をとる、また暑さや苦しさというストレスから過剰の水を取る。水を飲み続け
てしまうと血液中のナトリウム濃度が急激に下がる。ナトリウム濃度が下がると血液
の浸透圧が低下し、水分が血管外にシフトし、さらに脱水が進み、水を欲するという
悪循環に陥る。
低ナトリウム血症は極めて危険で、その予兆として虚脱感に襲われ、体に力が入ら
なくなり、ひどくなると吐き気、頭痛、視野狭窄、けいれん等につながり、マラソン大
会等で死亡例も報告されている。回復しても後遺症が残る場合もある。
大量に発汗する高温・炎天下で、血液の浸透圧の低下を防ぐにはナトリウムを十分
に補給する必要がある。考えられるのはスポーツドリンクであるが、市販のものには
ナトリウムを含まないものがあることと、含まれていても夏場のランニングなど激しい
運動にはナトリウム濃度が十分でない場合があり、注意が肝要である。スポーツドリ
ンクを過信してはいけないということである。そこでエイドに置かれている梅干しや塩
を取ることが、即効的に有効に作用するのである。
本コラムは、かねて熱中症に関するいくつかの資料を読んでいたものを取りまとめた
ものであるが、投稿のきっかけは5月21日のいわて奥州きらめきマラソン第1回大会
に参加した際、私自身が熱中症の症状に陥ったことへの反省である。
大会前日から東北地方は5月としては異常に気温が上昇し、当日は大会事務局から
の予報発表によると午後のコース上最高気温は33℃あった。私の月間走行距離は
昨年秋口から20~30キロ(レースを除く)で、屋外での練習はその半分程度。暑さ
に慣れておらず、体はまだ冬から春先の気候にしか対応できない状態にあったよう
である。
さらに、レース前1週間は非常に多忙で、睡眠不足と疲労蓄積で体調不良であった。
ほとんど日陰のないコースでスタートから多量の発汗があったが、エイドが少なく水分
の補給もままならず、吐き気をもよおし、頭痛も発生、明らかに熱中症の症状となり、
26キロ付近で民家の日陰で水道を借りて、頭や首、手脚を冷やし、1時間余り休息し
た。(50分近く眠っていたようである)
熱中症に陥った一番の原因は、私の体調管理である。多忙であったことはやむを得
ないことであるが、練習が十分でなく(ほとんど走っていない状況で練習をしていない
というのが実情)、気温も高く、体調も最悪、年齢も勘案するとスタートすべきではな
かったというべきでした。
体験から言えることは、熱中症対策は「体調管理」が最も重要であるということ。