

第732号
「カヌーの魅力」をあらためてふり返ってみました!
2020年8月26日
AAC会員
熊谷 憲氏
宗政名誉会長から「カヌーの魅力」についての投稿文を頼まれ、これはいい機会だなあ
と思いました。ここらで22年間のカヌー・ライフを振り返るチャンスをいただけたと感
じたからです。特に競技やレースという目標があるわけでもないのに、この歳になって
も朝の5時から漕いでいるときや、マイナス4℃の凍える中をダウンリバーしているとき
は、さすがに「よくやるなあ」とか「なにをしているんやろう」と我ながらあきれること
があるので、カヌーにどっぷりはまっている理由をあらためて考えてみようと思います。
カヌーの魅力は・・・一つ、いわゆる「下手の横好き」でしょう。
たしか22年前にカヤック(パーセプションのダンサー)を購入して以来、週末にはおも
に川で漕いでいたので、年間50日以上はカヌーをしていることになります。今は一日に
漕いでいる時間は短くなりましたが、単純に計算すると22年で少なくとも、のべ110
0日以上漕いでいることになりますが、そのわりには、上手くならないというのが正直な
実感です。
カヌーのスタイルには、スプリントカヤックやスラロームカヤックなどがありますが、私
が続けてきたのは、カヤックで川下りしながら、瀬があると自由にそこで遊ぶリバーカ
ヤックです。瀬には、ウェーブができたり、ホールができたりするので、技術が向上す
れば流れる水の力を利用して、カヤックを横回転や縦回転させたり、ひねりを入れたり、
跳ねたりすることができます。このようなフリースタイル・カヤックは動きが多彩で、
奥が深いです。カヤックがひっくり返ったときに起き上がる「ロール」という技術は、
カヌーを始めてすぐに身に着けた技術ですが、この「ロール」にもいろいろなやり方があ
ります。またカヤックは上半身だけのスポーツのようですが、膝や足元を踏ん張ったり、
体重を乗せたりして下半身も使います。そして、全身のひねり、バランスや重心の動か
し方、視線の置き方やメンタル面など、一つできても一つ忘れるといった失敗が多いだけ
に、上手くいかないことだらけです。
しかし、五十路を間近に控え、体力も筋力も二十歳のころには到底及びませんが、歳を
とっても技術は少しずつでも高められる気がします。しかも、頭で考え、身体で覚え、身
に着けた技術はいつまでもなくならないと思っています。「下手の横好き」を地で行きな
がらも、カヤックを操る技術が少しずつでも上手くなっていると思っている(勘違いして
いる)ところが、続いている理由の一つかなと思います。
カヌーの魅力は・・・一つ、旅としてのカヌーでしょう。
危険なイメージがあるかもしれませんが、ライフジャケットやヘルメットなどの安全装備
と、基本的な知識や技術があれば、カヌーはとても安全なスポーツだと思っています。
日本の川を下りたい、海外の川へも行きたいと考えていたので、知識を学び技術を磨こ
うと思いました。カヤックは、ひっくり返って抜け出し泳ぐ(ことを沈脱という)と危険度
が増し、体力を極度に奪われます。七転び八起きのように、何度ひっくり返っても、ロー
ルで起き上がれば、元通りなので泳ぐことはありません。カヤックを購入後、すぐにモン
ベルのロール講習に参加して、教えてもらったことを頭と身体に叩き込み、百本ノックじ
ゃないですが、週末に一人で川に行っては瀞場で百回連続ロールを特訓して身に着け
ました。
自分である程度漕げるようになると、北海道の川を漕ぎたくなり、舞鶴港(または敦賀港)
から出港する新日本海フェリーに、カヤックを積んだマイカーで乗り込み、若いころはよ
く川下りをしました。当時からダウンリバーのガイド本はありましたが、ネット情報はそれ
ほどではなかったので、出会った方に話を聞いたり、現地に行って漕ぎ出しの場所やゴ
ール地点を探したりしていました。初めての川、初めての場所はそういう意味でもおもし
ろいですね。
道東の釧路川は、湿原部分もいいのですが、川のスタート地点が屈斜路湖なので、その
湖から漕ぎだして、眺湖橋の下をくぐると釧路川が始まります。その漕ぎ出しの瞬間
から森の中の美しい川を進むので、源流部はとても心地よい時間を過ごせます。カワ
セミのような美しい鳥が飛んでいて、まっ白な蛇が透き通った水の中を泳ぎ、湧き水の
ところに手を入れると水が冷たく、クレソンが生えていて、あちらこちらに倒木があっ
て行く手をさえぎるところは、ちょっとした冒険気分を味合わせてくれます。
ゴール地点にカヤックやパドルなどの道具を置いて、ジョギングシューズに履き替え、
スタート地点の駐車場に向かって歩道を走っているとき、私の右横を並走する何者か
の姿が横目で確認できました。木々の中を走る人がいるのかと、ふと目をやるとエゾシ
カでした。エゾシカも、並走している私に気づいたらしく、お互い近距離で目を合わせ、
驚いた顔をしたかと思えば、エゾシカの方が森の奥へと逃げてくれました。
また、増水したときに、この釧路川の源流部を下ったときは、倒木に引っかかっている
フォールディング・カヤック(組立折り畳み式)を見つけました。倒木はストレーナーの中
でも、一度つかまってしまうとかなり厄介なもので、強度の低いフォールディング・カヤッ
クは、がっちり倒木にはまってしまっていました。こうなると、カヤッカーはカヤックと倒
木に挟まれて抜け出せなくて命を失うこともあるので、私は、おそるおそるカヤックの中を
確認しました。
運よく持ち主は抜け出せていたようで、中には何もなく、私はほっと胸をなでおろしました。
ただ、倒木にフォールディング・カヤックが張り付いたままだと、より強固なストレーナー
になりかねないので、なんとかフォールディング・カヤックを引きはがそうとしたのですが、
水流の力はすさまじく、まったくびくともしませんでした。もう少し水位が下がるまで無理
だと私は判断したのでそのままにして、ゴール地点で上陸後、地元のアウトドアガイドに、
危険箇所がある旨を伝えました。
北海道は美しい川はたくさんあり、砂金で有名な歴舟川、水質が良い羊蹄山の麓の尻別
川、都会の札幌市を流れ急流を楽しめる豊平川、ラフティングが盛んで激流の鵡川、富
良野のシーソラプチ川と空知川、屈足の十勝川などがあり、それぞれの川に忘れられな
いエピソードがあり、それを書くと長々とした紀行文になってしまいます。岐阜の長良川や
木曽川、関西では奈良吉野川や和歌山の北山川、京都の保津川や木津川、九州の球磨
川や大野川、四国の仁淀川や那賀川、激流吉野川の大歩危小歩危などを下りましたが、
面白いアクシデントやハプニングがあり、川遊びの魅力はいくらでも語り続けられます。
しかし、やはり実際に経験するのが一番ですね。
カヌーの魅力は・・・一つ、激流への危険な誘惑でしょう。
学生時代はバイクでテント旅行をしていて、野田知佑さんの著書「日本の川を旅する」
や椎名誠さんの「わしらは怪しい探検隊」シリーズを愛読していたので、のんびり川を下
ってテント泊する旅をイメージしていました。しかし、1級程度の瀬しかない川ばかりだと、
正直すぐに飽きてしまいました。そんな時に、北海道へ川旅に出かけ、新日本海フェリ
ーで小樽港に着いてすぐに尻別川に向かうと、同じ便のフェリーに乗っていた関西在住
のカヤッカーに尻別川で出会いました。シットオントップ・カヤックとリバーカヤックを車
上に積んだそのカヤッカーは、「仕事の出張ついでに漕ぎに来ました」と言いました。仕
事かカヌーかどちらがメインなのか分からないぐらい怪しいいで立ちでしたが、関西に戻
ったら一緒に漕ぐ約束をしました。
ところで、以前、BS朝日でドラマにもなった「サラリーマン転覆隊」は、20年以上前か
らアウトドア雑誌「BE-PAL」で連載されていました。カヌーでやられるときは豪快に
転覆することをモットーとするサラリーマン転覆隊にあこがれをもつ「〇〇隊」というカヌ
ー・チームが、この時いくつかできました。北海道で出会ったカヤッカーは、いわゆる「
〇〇隊」の一つで、関西で活動するどんぶらこ隊の一員でした。
どんぶらこ隊の仲間とは、急流、激流といわれる川へ漕ぎに行きました。サラリーマン
転覆隊は、映像での記録も充実していましたが、当時は防水デジカメなどなかった時代
だったので、私はデジカメと同じ値段がする防水ケースを購入して(つまりデジカメ2台
分の費用)、どんぶらこ隊の仲間が豪快に転覆する写真や動画を撮りまくりました。泊
りで川に行った時には、転覆写真や動画を酒の肴に飲み明かすというカヌー遊びに、若
い頃は没頭していました。
カヌーの魅力は・・・一つ、種類が多すぎて遊び尽くせないでしょう。
所有しているカヌーはリバーカヤック4艇と、1人乗りダッキー、2人乗りダッキー、6人
乗りラフティングボートに新しくシーカヤックを購入しました。若い頃は、いつかはサーフ
ィンと思っていましたが、リバーレスキュー講習やラフトガイドトレーニング、リバーカヤッ
クインストラクターなどの技術を磨いていると、やりたいことがあり過ぎて、海までサーフ
ィンをしにいけないとあきらめました。
また、これだけ所有艇があると、私のカヌーだけでプールでのカヌー体験ができます。
毎年、小学校で小学生を対象にカヌー体験をしていますが、一度に全部をプールに浮か
べると動かせず、また準備するだけでもひと苦労です。しかし、子どもたちが楽しそうに
漕いでいる姿を見ると、疲れも吹き飛びます。でもやっぱりプールではなく、川や海な
どの自然のゲレンデで漕いだら、何十倍も面白いのになあと、いつも感じています。
ゲレンデといえば、若い頃は、大山スキー場でスキーをして、2日目は日本海の荒波で
サーフカヤックをしました。サーフボードではなく、リバーカヤックですが、日本海の大波
を多いに堪能できました。冬の日本海の大波の高さと、波に乗って走り出した時のスピ
ードは、まるでジェットコースターのようで、川とは違い、風の強い海の一瞬一瞬のパワ
ーの強さには驚かされました。
今年はカヌーマラソン大会に参加したいと思って、シーカヤックを購入しました。特に、
カヤックと自転車と登山をする「シートゥーサミット」の皆生大山大会(5月)か、三重紀
北大会(11月)の参加を目標にしていましたが、新型コロナウイルス感染予防のため
に中止になってしまいました。シーカヤックは、回転性能が高いリバーカヤックと違って、
艇長が長くキールがはっきりしている形で、ラダーもあるので直進性がとても優れてい
て、スピードが出ます。シーカヤックといいますが、深さがあるところでは川でも漕げます。
近場では、枚方市長杯カヌーマラソン大会が淀川であります。リバーカヤックでもシーカ
ヤックでも、SUPででも参加できます。
もちろん新型コロナウイルスが終息してからの話になりますが、「シートゥーサミット」や
近場のカヌーマラソン大会に参加しながら、いつかは遠方の奄美シーカヤックマラソン
IN加計呂麻大会に出てみたいと思います。
もしAACの方で、カヌーマラソンに興味があって、カヤックの練習するのであれば、ご一
緒できればと思っています。カヌーを始めるには、芦屋浜や海洋体育館というとても充
実した環境が、芦屋にはありますから。