
投稿第143号
先人の伝説を追体験して〜夜叉ヶ池伝説マラニック〜
2008年8月23日
AAC
会員:野上亨氏
7月26日(土)〜27日(日)にかけて、岐阜県西美濃地方で「夜叉ヶ池伝説
マラニック」が開催されました。今年で16回目を迎える大会は、神戸(ご
うど)町役場をスタート、池田町・揖斐川町を舞台に、福井県境にそびえる
三国岳山頂の「夜叉ヶ池」(標高1,105m)を目指した後、神戸町役場へゴー
ルするものです。大会理念は、地元に伝わる「夜叉ヶ池伝説(雨乞い伝説)」
で苦労した先人の思いを追体験して、水・自然の大切さを考えようとするも
のです。
私は、第1回から参加しており、途中ボランティアスタッフも経験、昨年か
ら再びランナーとして復活、今年で9回目の挑戦でした。今までの8回は、
幸い全て完踏しています。知り合いに騙され無謀にもウルトラ初挑戦したの
が超過酷なこの大会であり、またAACとの出会いのきっかけになったのも
この大会ということで、私にとっては特別な思いがある大会です。
(AACとの出会いについては、投稿第63号を参照ください)
今年は、途中池田山を経由するスペシャルコース(144km)に63人が、池田
山を経由しない通常コース(135km)に301人が参加しました。梅雨明け直
後の最高に暑い季節で、前日は岐阜県地方が猛暑に見舞われ、揖斐川町では
観測史上最高の38.1℃で全国3位を記録しました。第一ステージの翌26日
も、それに匹敵する猛暑の中、今まででは一番過酷なレースとなりました。
私が参加した通常コースは、午前11時にスタート。第一ステージは、揖斐
川町坂内の「遊らんど」で当日開催されている[道中祭り]会場がゴールの
45km。序盤から暑さに悩まされ、給水所での給水だけでは追いつかず、
自販機で購入して持って行かないと熱中症になりそうなほどでした。揖斐川
沿いへ入ると日陰ができるところもあり、少々楽にはなりましたが、確実に
体力が消耗していくのが実感されました。夕方5時を過ぎても33℃の気温
を記録する中ゴールしました。
27日の第二ステージは、午前3時半スタートして、夜叉ヶ池を折り返して
神戸町役場までの90km。いつもならの涼しいスタートですが、今年は気
温が下がりきっておらず、蒸し暑さが残る中をスタートしましたが、林道を
経由して登山道入口(標高752m)までは快調に進みました。
ここから夜叉ヶ池までの片道3kmは未舗装の登山道です。狭い登山道の終
盤、上りと下りの参加者が入り混じってラッシュアワーの様相を呈します。
最後の「夜叉壁」をロープを頼りに上り、標高1,105mの伝説の夜叉ヶ池に
到着。神秘的な雰囲気の漂う池は正に伝説を感じさせます。周りの木々には
モリアオガエルの白い卵があり、池の中には夜叉ヶ池固有種で国の特別天然
記念物、ヤシャゲンゴロウが生息します。それまでの苦労や疲れを忘れさせ
てくれる不思議な力が夜叉ヶ池にはあり、これからの帰路へのエネルギーを
もらえる気がします。
登山道下りを慎重にこなして、そして林道をしっかり下りて国道に出ました
が、この頃から晴れて気温が上がり始め前日の疲れも加わって厳しいレース
になりました。坂内小中学校関門(通算93.4km:閉鎖12時)を11時34分に通過
して、残りの関門を気にしなければならない状況になり、益々厳しいものに
追い込まれました。とにかく行ける所までと歩を進めるうちに、午後1時を
過ぎて天候が急変しました。
揖斐川の谷沿いに吹き下ろす強風とともに雷雨になり、一時は前が霞むほど
の雨になりました。この雷雨が幸いしました。同時に気温が一気に下がり、
走りも一気に蘇りペースアップ。その後晴れて、気分も晴々。最後は神戸町
商店街で開催されている縁日の中、「お帰り」の声援を受けながら午後5時
55分に無事神戸町役場へゴールしました。
2日間合計で21時間36分18秒と昨年より約1時間多くかかりましたが、前日
の暑さを考えれば、なんとか9回目の完踏できただけで大いに満足していま
す。あの雷雨が無ければ、恐らくはリタイアしていたと思います。正に、雨
乞い伝説による雷雨に救われた大会でした。
岐阜新聞によれば、参加364人のうち、ゴールしたのは195人(54%)で
した。ウルトラマラソン経験豊富な参加者が集まる大会としては完踏者が少
なかったと感じます。やはり気象条件が過酷だった証明だと思います。私に
とっては、来年が10回参加の節目。なんとか完踏して区切りを付け、その
後はまたボランティアスタッフとして活動するつもりです。AAC会員の皆
さんも神秘の池「夜叉ヶ池」を目指してみてください。挑戦をお待ちしてい
ます。(開催は毎年7月最終の土日です)
※夜叉ヶ池伝説
美濃の国神戸(ごうど)にいた郡司安八太夫が夜叉ヶ池の龍神に雨乞いを行い、
恵みの雨に返礼として娘の夜叉姫を龍神に嫁がせたという物語です。その後
は、日照りになると地元の農民が夜叉ヶ池へ参り、雨乞いしたということで
す。この物語は泉鏡花が戯曲として作品に仕上げており、その中に「花は人
の目を誘う、水は人の心を引く、君も夜叉ヶ池を見に来たという」という一
節があります。以上ですが、結局長い文章になりました。申し訳ありません。
(夜叉ヶ池伝説マラニック完走記録)
135kmの部総合タイム:21時間36分18秒順位:139/156