生涯スポーツとしてのトライアスロン!特集第2号(連載)6~10

特集第二号(連載その6)
生涯スポーツとしてのトライアスロン!
(競技志向の落とし穴)
2006年1月13日

ナンバについては中休みして本題「生涯スポーツとしてのトライアスロン」に戻ります。最近ある方から私と同年代のトライアスリートたちが5人ガンで、1人が心臓麻痺で死んだと聞き、鉄人と言われる人たちなのに「何でやネン、もったいないことや」と思いました。ただでさえトライアスロン人口が減りつつあるときに、仲間を6人も失ったことは大変な損失です。

トライアスロンは本来、健康に良い3つの有酸素運動を組み合わせた健康志向のために生まれたはずです。忙しい生活の中で自分の都合の良い時間に他人の干渉を受けず、一人黙々と打ち込める良さがあり、内省的に自分と向き合うのに最適です。さらに私としては日常生活で生かせる自転車が団塊世代に普及し、全国を四国88ヶ所のお遍路道のようにチャリンコ道が簡易宿でつながれば、老化防止で医療費は激減し、エコロジーと都市生活の融合、健康自立の素晴らしい脱クルマ社会になると期待しています。

1960年代のアメリカでは、車社会の弊害で足腰の弱い高齢者が増えた対策にランニングが有効であると分かり、ボストン、NYなど大都市で市民マラソンが始まりました。楽しくゆっくり走るファンラン、踊りながら健康になろうとエアロビクスダンスなども生まれました。

競技志向優先になると「時間内に完走しなければ恥」だとか、他人と比較したり世間の評価を気にして、それがストレスになり心身の調和を失って疲労が重なり、体に悪い活性酸素がたまるということになりがちです。

日本のためにと追い込まれて自殺した儒教的な円谷選手の時代は昔のこと。自分のために楽しむQちゃんや、オリンピックで好成績を出すようになった最近の若者は道教的になり意識が変わってきたといわれています。

しかし、相変わらず日本では制限時間で打ち切り、コースに残った選手を切り捨てる都市型マラソンやトライアスロン大会ばかりです。

競技志向が強くなると、どうしてもトレーニングの時間が多くなり、家族との時間も犠牲になるのではないでしょうか?
家族の理解があると思っていても、気づかぬうちに精神的な負い目となったり、心身のケアが疎かになり、病気やケガを呼ぶ遠因になります。

私の場合も心拍数42/分の維持や年代別入賞にとらわれていたりしましたが、大震災のおかげでそのトラウマから抜け出すことができました。震災後はトレーニングできる環境がなくなり、そこで体力を有効利用するために兵ト協が引越しボランティアを組織し、一人住まいでお困りの方や高齢者の引越しをお手伝いできました。

こうして自己中心型から抜け出し、志を高く保つための工夫を日常的にしようと、トレーニングの有効利用を真剣に考えました。

できる限り通勤や近隣の移動にはMTBを利用する。通勤時間がトレーニング時間となり、混んだ電車や車に乗らなくて済み、無駄な付き合いや寄り道もなくなり、不要な情報(通勤中の様々な誘惑など)に触れることもなく、バイクに乗ると即仕事のことを忘れてアスリート思考(右脳)に切り替わり、都会生活でのバイクの達人になり、汗をかいて帰ってすぐの風呂、軽いストレッチ、うまいビールと食事、そして快眠。

これだけで十分に宮古島大会を完走できる体力も維持でき、トライアスリートとしての現役を維持。
一石何鳥にもなる時間の合理的な有効利用が、ストレスフリーのライフスタイルとなります。マイカーを持たなくなると、年間100万円くらいの節約にもなります。

私がトライアスロンを始めた22年前、ハワイ・アイアンマン5回優勝のデイブ・スコット著『トライアスロン』が唯一の入門書で、実に名著でした。

たとえばトレーニング法や運動生理学など以外に、食事の項目では菜食が紹介されており、私もサラダ、ヨーグルト、ローファット牛乳、シリアル食を一日一食実践して、血液のサラサラ状態がランで体を軽くし、持久力が生まれることを実感しました。

日本に来る外国人選手もベジタリアンが多く、彼らの健康管理や競技生活に真摯に取り組む姿勢に見習うべきところがありました。

外食文化花盛りのグルメ日本では誘惑が多すぎて、現在の玄米菜食へと切り替えるにはかなり抵抗があり、時間もかかりました。特に繊維質の多い玄米を主食にすると排便がよくなり、キレ痔が治ったのには説得力がありました。

これで体の血液をサラサラにするという意識を持つことは重要な要素で、例外もありますが腸の長い日本人には体内で腐敗しやすい肉食は控えめにしたほうがよく、血糖値や血圧を自己管理する「養生法」としての認識が必要だと実感できたのです。

外食するとアルコールや糖分の多い食品が多く、油断するとかなり多く摂取してしまうので、血糖値を上げて糖尿が心配です。

会社勤めですので外では何でも食べてますが、家庭では有機農法の野菜などを共同購入して、玄米菜食を中心にしています。

世界で最も料理法が豊富で贅沢なグルメ大国に加え、甘いお菓子、飲み物も多く、肥満が増えています。世界中から食料を輸入し、飽食を煽り、食べ残しの生ゴミ大国になり、生活習慣病で医療費無駄使いの悪循環。

新しい食品やサプリメントの開発、売らんがためのもっともらしい栄養学がテレビ、新聞や雑誌から流され、私たちを洗脳し撹乱します。

米国流の栄養剤、栄養補助食品や「一日30品目」は本当に必要なのか?
健康を害する落とし穴は多種多様で、どこで遭遇するか予知不能。不運の事故もあるし、生活環境、人間関係、食事など油断できません。

ライフスタイルや運動習慣の大切さを省みず、楽な方に流され、気がついたときには手遅れで医者通い。残業、土日出勤、少ない休暇。そんなことをゆっくり考える暇もゆとりもなく、とにかく忙しすぎて大会出場を断念する人も多い現状で、まさにトライアスロンの受難の時代でしょう。

だからこそ、トライアスロン・ライフを実践し、健康管理をしてほしいのです。

大会に出られなくても諦めず、「健康志向」でRun, Bike, Swimの3種目を日常生活にうまく組み込めば、それで十分健康管理でき、いつでも大会に出場できるはず。

こうした実践者が増えれば、ライフスタイルの改善や、生涯スポーツとしてのトライアスロンはもっと都市生活者向きと評価され、愛される時代がくるはずです。

特集第二号(連載その7)
生涯スポーツとしてのトライアスロン!
(みなさん、国体に参加しましょう)
2006年2月9日

最近はトライアスロンに限らず、スキー人口が一時の3分の1に減っているそうで、それは携帯電話の普及のためだとの説があります。携帯が若者の生活に欠かせぬアイテムとなり、その経費捻出のためお金のかかる遊びをするゆとりがなくなったそうで、なんとも悲しいこと。

携帯とコンビニにはあまりお世話になりたくない私にとっては理解できないところです。しかし近頃の人たちが厳しい自然との触れ合いや体を鍛えるといった気構えが希薄になったなどと嘆いたりはしません。

逆に冬のスキー場がスノボで混雑しなくなったなら、神戸空港から北海道や新潟も近くなったし、そろそろウィンタースポーツを再開しようかという気になります。20年以上もトライアスロンと付き合ってきて、耐久競技にも自信がありますし、きっと若い頃とは違う味があるだろうと、定年後が楽しみです。

さて、今年は兵庫国体でトライアスロンがデモスポ競技で開催されますが、兵庫県の会員の皆様には特典のある絶好の機会ですので、多数の方に参加していただきたいと思います。これを機会に兵庫県協会の会員数が復活してほしいと思います。

その追い風のように、年末にはSMAPの二人がグアムで挑戦する番組がありました。内容はともかく、スイム、バイク、ランの3競技を続けてする競技であることを、影響力のあるスターが紹介してくれたのは嬉しい宣伝になりました。

今年のロタ島でのトライアスロンにも、さる有名な会社の社長が挑戦したとの話を聞きました。過去にゴルフが普及したように、「取引先の社長がしているから」といった動機が何であろうと盛んになってくれれば良いと思います。

ゴルフのような環境破壊型ではなく、環境保護型の競技であることが理解されれば、トライアスロン人口は増えると確信しています。

そして誰でも最初は競技志向とか、頑張りすぎるワナに落ち込みます。そしてケガや病気をして、自分の身体を知り、知恵を習得し、無理をしないようになります。

しかしバイクの事故などは、整備不良など自己責任だとしても、避けられるものなら避けたいものです。私も致命的な事故を避けてこられたのは、運が良かっただけのこと。

健康で長生きしたいと思って取り組んでいる以上、トライアスロンに裏切られたくありません。ケガをして会社を休むと、「因果応報だ、好きなことをして会社に、家族に迷惑をかけている」と言われたことがあり、それで本当にやめてしまう人もかなりいます。

事故はいつでも起こります。ゴルフでも、山登りでも同じで、街で階段を踏み外したりと、生きている限りいつでも起こりうることです。

有酸素運動のお医者さんが薦める代表的な3種目で、健康管理に良いといった理解が深まっていると思いますが、トライアスロンになると「過酷だ」との間違った印象を持たれていて、普及の障害になっています。

こうした誤解を解くためにも、経験豊富なベテランたちが普及に一役買ってほしいと思います。高齢者の山登りには初心者向きのガイドブックが豊富ですが、トライアスロンにもぜひ必要です。

団塊の世代のほとんどは「少し走れば息切れする、マラソンなんてとんでもない」とか、運動経験は球技スポーツしか知らない人、あるいは糖尿、高血圧の持病持ちとか、ストレスと過労で半病人が多く、とても一人で運動することに耐える気持ちや習慣がありません。

そのために、トライアスロンが「自分の体力にあったマイペースで取り組めるエアロビクス運動として、体に負担をかけないゆっくりの泳法を習い、階段の上り下りや歩き、人と話しながら走るLSDの超スローのピッチ走法、持ち運びできる軽い自転車を軽いギアで乗る利点を知り、上手に生活に取り入れ習慣にすれば、スローなライフスタイルへと改善できる素晴らしい健康法なのです」といっても、ほとんど理解してくれる人はいません。

その意味で、トライアスリートは社会的に“特別の人”と誤解されていますので、ベテランたちはその誤解を解く義務として、強さの謎や秘訣、ノウハウ、経験を伝える役目を担ってほしいのです。

これまで私は、トライアスロンが盛んになってほしいと思い、クラブ活動で仲間との交流を大切にしてきました。いや、ウルトラマラソンの世界まで知り、不可能だったことを可能にできたのは本当にトライアスロンの仲間のおかげで、そんな出会いがあって今の自分があるのだから、生涯を通じて付き合っていきたい同志だと思っています。

そのことを人に伝えたい。その思いをこうして協会の会報に書かせていただいています。

私の所属する兵庫トライアスロンクラブが発足して今年で23年になり、今は神戸を中心に活動していますが、すでに高齢化し、クラブ員の大会への出場回数は減り、練習会もほとんどなくなりました。

ですが、絆を大切にして、夏は集まってビールを飲み、暮れには餅つき大会をし、協会の競技にはボランティアで参加しています。唯一、宮古島大会には多数での参加を目標としていますが、最近は6、7人になりました。

嬉しいニュースですが、団塊の世代定年組の宗政さんが芦屋浜アスリートクラブ(AAC)
<ホームページ http://www.eonet.ne.jp/~munemune/>を結成し、芦屋浜でカヌーアスロンやウルトラマラソン、練習会を開催されています。

地域の良い環境を生かして、こうした活動が生まれてこそ、同志の交流が熱くなってまた元気になれます。まさに私たちがお互い生かされていることを実感できる、大切な活動なのです。

こうしたベテランたちの活動が地域に生まれてこそ、それぞれの経験を初心者に伝えていく環境が生まれます。

ぜひ協会会員の皆様も、地域のトライアスロンクラブを活性化し、定年を迎える団塊の世代にトライアスロンの良さを伝えていきましょう。

2006年2月12日(日)には、兵庫国体第2回準備委員会(9:00〜12:00am)がありますので、ぜひ一緒に加わってください。普及のための絶好の機会ですので、まずはトライアスロン競技を盛り上げて成功させたいと思います。よろしくご協力ください。

特集第二号(連載その8) 2006年5月26日

生涯スポーツとしてのトライアスロン!
(みなさん、国体に参加しましょう)

震災後、縁あってこの宮古大会に参加してから今年で10回目の参加となります(ニュージーランド・アイアンマンに途中1度出場)。たくさんの友人ができたおかげで、毎年キャンセル待ちなどで参加してきました。宮古大会は寒い冬や雨の多い春先に工夫して運動習慣を維持するのに、時期的にちょうど良く、年に一度は苦しみもがいてロングを走り、完走できれば「体力が衰えていない」と自己健康診断の目安としてきました。

来年還暦を迎えるので、退職後にどんなライフスタイルに切り替えるか考えています。体力はピークから下降線に入っている老いを真摯に受け止め、もはや新しい事に気を取られず、これまでの体験で得たことを深めていきたいと思っています。私の理想は、西洋式のジムでのランニングデッキやエルゴメーターでのマシーントレーニングより、古武道の杖道練習やヨガ、山登りなど自然に触れ合うこと。マイカーは持たず、バイクかウォークで行動し、ロング完走の体力を維持することです。そこで昨年の宮古島の後、月1万円の出費を節約するため、会員制のジムも脱会しました。

今年の宮古島大会には一度も泳ぎに行かず、ランは週に1度は摩耶山に登る、バイクは土日の雨が祟って3月に2度六甲山に登っただけでした。しかし、こんな状態でも、宮古島の土地が持つ独特のエネルギーと、大勢のボランティアや島の人たちの声援に助けられてか、なんとか完走できる自信はありました。

もちろん楽には完走できません。思い切り苦痛を耐え忍び、最後まで諦めずに前進する喜び・楽しみ。これは正にマゾヒストに通ずるのでしょうが、この「苦しむことを喜びとする」超プラス思考こそが、トライアスリートのパワーの源であり、財産だと思っています。

さて大会当日、穏やかな朝を迎えましたが、その後にわかに雨が激しくなり、デュアスロンに変更になりそうでした。しかしスタート30分前にはまた穏やかな天気に戻りました。私もいつもの調子でバトルを避けてゆっくりと泳いでいましたが、なぜか1700mの折り返し地点まで時間がかかり、腕時計も壊れて表示しなくなり、「これはかなり強い逆潮だから帰路が追い潮で楽になる」と考えマイペースを維持していました。

ところが1700mの折り返し直前で、「タイムオーバーになりました、ボートに上ってください」と宣告されびっくりしました。周りにもたくさんのベテランがいて一緒にボートに上がらされました。今回のように往路で逆潮になるケースは10回のレース体験で初めてで、こんな時に1700m50分の規制は厳しすぎると思いました。

「苦しみに耐える一日」の予定が「楽する一日」となり、「10回に一度くらいゆっくりしなさい」という神様のお計らいだとプラス思考し、トラバッグをまとめ嬉々としてホテルに戻りました。洗濯や荷物の整理をすませてゆっくりし、ドイツ村の観光も兼ねて、午後よりバイクに乗って、いつもは見られないトップ連中のバイクの疾走の姿やマラソンコースでの人々の声援風景を観戦しました。

ゴールの競技場では、いつもお世話になっているおばあちゃんと一緒に花束を持って友人を待つ間、これほどまでに多数の人が熱い思いで選手の到来を待ち受けているのかと感謝感激させられてしまいました。そして約1300人のゴールを待ち受け、花の冠とタオルを渡してくれる日航の4人のスチュワーデスさんが一緒になって感動して涙を流す美しい姿を見て、「ああなんと宮古大会は素晴らしい」との印象を新たにしました。スイムの失敗のおかげで貴重な観戦の一日となり、のんびりと宮古島で過ごすことができました。

しかし来年の還暦を10回目の完走にするため、大会前にせめて2、3度ロングを泳いでおきたいと思っています。

今年は医療班の歯医者さんと話す機会も得ました。ご自身も隔年で参加されているアスリートなので、トライアスロン選手の中には健康管理が無茶苦茶な人とか、血栓を持った人が結構いるとか、島の人々の中にもレースに対して無理解な人が多いとか、話が面白かったです。

大型台風の被害が多い宮古では、本土からの緊急支援が当てにならないので、トライアスロン大会で組織した医療チームの経験が役立っているとか。22回の長い実績を持つ宮古大会医療グループには伝えたい貴重な話がたくさんあるとのことで、本土の医療関係者との交流を希望されていました。その宮古島大会も存続が保証されているわけではありませんが――。

参加させてもらう立場からすると、どの大会もできるだけ長く続いてほしい。寂しいことですが、20回目のオロロン大会が今年で最後になるそうです。財政難に加え、住民の高齢化、大会を支える2000人ものボランティアの確保難、大会予算は約2800万円で、ほぼ半額を市町村が負担、残りは選手の参加料や協賛金でまかなっているとか。

淡路大会も今年は兵庫国体として開催されますが、来年以降は企業の協賛を得られれば存続可能ですので、スポンサー探しの強力な助っ人が必要です。超党派でトライアスロン議員連盟(仮称)が結成され、国体正式競技に向けて結束していくことが話し合われたとの話ですが、期待したいところです。

最近、神戸空港へと海底を通るポートアイランドへの道路が開通しましたが、自転車を排除した道路づくりになっているので、私は会社までかなり迂回して行かねばならないという残念な現実。日本の現状は、車優先の都市開発がいまだ進行形です。

環境先進国のヨーロッパのように自転車を持ち込めるニュートラムを採用し、都心からマイカーを締め出して自転車が快適に乗れるようにするなんて、夢のような話。

ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアのようなバイク競技が開催され、そしてもちろんトライアスロンがどこでも気軽に開催されるようになってほしい。

嬉しいニュースとしては、来年2月に制限時間7時間の東京マラソン2007が開催されることが決まりました。これを突破口に大阪、神戸や全国各地で同規模のマラソン大会が開催されるようになれば嬉しい。そしてマラソンブームが復活し、都心でのバイクレースやトライアスロン大会の開催の規制緩和へと繋がればと願っています。

特集第二号(連載その9)
生涯スポーツとしてのトライアスロン!
(自転車通勤の極意)
2007年1月19日

昨年末の停年退職までの23年間あまり、すなわちトライアスロンを始めてから私は通勤に自転車を活用した。
通勤時間をトレーニング時間にするなんて、これほど無駄のない有効な時間の使い方はないと考えた。
この頃は東鳴尾の武庫川の近くに住んでいて会社まで20キロほどあり毎日ではなかったが、
現在の阪急六甲に引っ越してからの16年あまりは雨の日以外ほぼ毎日自転車で通勤した。
距離は片道6キロで往路は軽い下りゆえ、夏でもあまり汗をかかない私は会社で着替える必要はなかった。
年に1度参加する宮古大会が4月にあるので、冬の寒い日は早めに家を出てランかウォークで通勤した。

通勤時に自転車を使用し事故が起こった場合は勿論すべて自己責任とするのは覚悟の上である。
ロードレーサーに乗り始めた最初の頃、お年寄りに接触してケガをさせてしまい、
救急車を呼んで入院してもらった事がある。
誠意を尽くしありがたいことに後遺症も残らず無事退院されたのと、
偶然かけていたバイク保険で全額出たのは嬉しかった。
この事故を教訓にして出勤する時は、「事故は起こしません」と心に暗示をかけるようにしたが、
忘れた頃にまた転倒しケガをした事が数度ある。
一度坂を下っていた時に前を走る子供が急に回転ストップを掛けて私のコース上で止まったので、
前輪部分に直撃し私は彼の上を空中回転して落ちたことがあった。
この時も大したケガも無くすんだが、事故とは避けられないもの、
小さな事故の体験を積んで大きな事故を起こさぬ知恵を授かるのかもしれない。

こうしたリスクがあったとしても、通勤自転車にはあり余るメリットがあって止められるものではありません。
日常的にバイクに乗ることは、単にトレーニングや老化防止になるだけではなく、精神衛生上のメリットが抜群です。
まず毎日の煩わしい通勤電車に乗らなくてよいのが最高にありがたい事。
1分2分を争って電車の時刻通りに家を出る必要はなく、
人ごみのする電車の吊革をもって車内広告からの無駄な情報に触れることもなく、
痴漢に間違われることもなく、通勤途上の様々な誘惑と戦う必要もなく、
通勤費も不要であり、季節に合わせたおしゃれ着に余計な経費をかけたり、
気を煩わされることもない。
家を出て一度バイクに乗ってしまえば、瞬時に五感が開いて気分はアスリートに変身し身が引き締まる。
ハンドルを握った手に体重を掛け、腹筋を絞めストップ&ダッシュを繰り返し、
上り坂で足腰を鍛え、下りカーブのコーナリングにスリリングな緊張を味わい、
天気の良い日はサイクリング気分で自己満足の右脳世界に浸る。
動体視力、とっさの判断力、野生的な運動神経の維持が若々しい心身状態を保ってくれる。
都会のジャングルの中を颯爽と走りぬけ、会社に着いた時は目も覚めて爽快な気分で仕事に掛かれる。

帰宅時も、会社で嫌な事、失敗した事、難題が降りかかった時など、
バイクにまたがって自宅へと走り始めれば、帰路も同じく頭の中のスイッチが切り替わり、
プラス思考がマイナス思考をかき消してくれ、アイデアが降りてきて難題も解決、
瞑想状態に入りエンドルフィンが出始めれば痛んだ胃の痛みも薄れるといったことが日常化します。

まだ子供が小さかった頃は東鳴尾に住んでいた。
夫婦共働きゆえに子供が家で待っていると考えるとバイクに乗っていてもその事で頭がいっぱいになる。
今日はどんな楽しいことをしようか、晩御飯のメニューが頭に浮かぶとスーパーによって
お惣菜を買って帰り料理を作ることもあった。
バイクでもランの時でも、体を動かし始めると肉体の刺激が左脳中心の思考回路から
右脳のイメージの世界に入っていく。
正に瞑想状態の誰にも干渉されない時間は、バイクの乗り方とか走法とか姿勢、
食事法、健康法について常に考えて走るのが長い習慣となり、
いろんな企画をしたり文章が書きたくなる訳である。
サラリーマン・ライフの貴重な通勤タイムが、なんと言っても「行」としての心身の試練を味わえただけではなく、
自己との対話の至宝の時間帯になったのはなんと幸運なことかと思います。

幕末の儒学者、佐藤一斎の『心志を養うは養の最なり、体躯を養うは養の中なり、口腹を養うは養の下なり』
という言葉があるそうですが、これを私流に解釈しますと、
厳しいトレーニングの後ほど食事が美味なことはない。
空腹は最高の味覚であり、どんな粗食でもありがたく頂ける。
そんな事よりトレーニングが日常化すれば、生活習慣病の予防になり元気で健康な心身を得られ老化防止になる。
しかし最なるものは、こうしたトライアスロン・トレーニングに打ち込むことが出来る日常生活に感謝し、
心身を養い精神面の充実を得ることである。
物好きにも趣味で苦しいことが大好きな私達は世の中でも少数派のようで、
よほど前世でも修験道者か武士か探検家で生命力が旺盛で苦行のような事をしていたのか、
孤独に自己鍛錬に励む精神性の高い人種なのでしょうか?
こんな素晴しい心志を養うトライアスリートが集まってきた兵ト協に感謝しつつ、
さらにもっとトライアスロンが普及し人気競技として盛んになって欲しいと願っているのです。

特集第二号(連載その10)

生涯スポーツとしてのトライアスロン!
(トライアスロンを人生の黄金期に活かす)

2007年5月17日
清水 正博氏
兵庫県トライアスロン協会副理事長
健康道場「サラ・シャンティ」道場主

五木寛之の「林住期」(幻冬社)によると、50歳から75歳までの25年間を「林住期」とし、社会人としての務めを終えたあとすべての人が迎えるもっとも輝かしい「人生の黄金期」と書かれていますので、まだまだ老いるという言葉と無縁な気がします。しかし周りを見ると同世代でかなり老いの進行した方がいてびっくりします。定年後の生活設計を見据えて、頑張らず適度な緊張を持続する程度にやってきたお陰で、この4月の宮古島では10回目の完走を果し、宮古の定年の65歳までは続けたいと決意を新たにしました。トライアスロンは都市型生活の理想的健康術だとの再確認もしました。

太く短く華々しく生きるのか、細く長く堅実に生きるのか。私は後者のタイプでやってきて今年1月に60歳定年を迎えました。トライアスロンの3種目は遅筋・持久筋を開発する健康法として生まれて来た訳ですから、「カメさん」のように走る人生観を持った人が多いと思います。と言っても、私も最初は競うのが好きな「ウサギ」さんでしたが、震災を境に焦らず、競わず、比較せずの楽なカメさん型に人生観が変わり、会社勤めを終える60歳までは年に1度の大会だけでも続けようと思って、宮古大会だけは参加してきました。老いてもボケることなく寝込むことなくピンピンコロリと死ぬまでトライアスロンができれば嬉しいことなので、生活の中で3種目を上手に生かせるライフスタイルを考えてきました。

こんなカメさんトライアスリートであっても、世間では毎日何時間もトレーニングに費やし、年に何度も過酷な競技に挑戦する異常な体力の持ち主と見られているようです。私の家(神戸市灘区)の周辺は坂道が多く自転車で走り回っている人は確かに非常に少数です。MTBに乗って、例えば西方向では六甲から三宮、東方向では芦屋へ、電車・マイカーでの移動と時間差なく行けます。重たい荷物がある時は、登山用の背負子を利用して担いで帰ってきます。農業を営む人が、老いても畑を耕すように、都市で楽しく元気でお金の掛からない生活を営むためにMTBを足代わりにしているだけです。こんな健康に良い合理的なトレーニングなのにマネする人が出てこないのが残念でなりません。最近のMTBは安いし、パンクもほとんどないし、修理も簡単、前3段と坂道を登るのも楽にできているなど、便利で最高のツールだと思う。

昔は重たい自転車を押して豆腐を売ったり、牛乳を配達したりするのが当たり前だったのですが、車社会になっておかしくなりました。私がマイカーを持たない理由は数々あります。
・会社勤めだと土日しか乗ることはないのに駐車場が必要、このダブルの損失。
・近い場所でも、どこへ行くにもマイカーに頼る悪習慣が生まれる。
・警察官や道交法など意識しなければならない、ネズミ捕り、駐車場探しなどトラブルに巻き込まれる、高い探知機が買える人買えない人、これって変だよね。
・人格が変わる。「チョッとの接触事故でも『すみません』と先に謝った方が負け」といったことが常識になっている、日本人として恥ずかしいよね。
・ガソリン代、保険代、高速道路代金その他経費が掛かりすぎる。
・渋滞が嫌い、時間的ロスが多い、本が読めない、眠れない等。

その点、自転車だと駐車場さがしの煩わしい問題がないし、環境保護に貢献してるし、欧州の都市のように市内をマイカー規制しても影響も受けないなどメリットが多いのに、日本は自転車を社会に活かす方向へ改善する努力をしない。だから、こんな車社会と関わりを持たないほうが気持ちが良いという信念が生まれる。どうしても車が必要な時はレンタカー・タクシーを使うようにしていますが、めったにありません。

いかに車に頼らないか、そしてランや自転車をいかに活用するか考える習慣が身につくと、筋金入りのプラス思考人間になります。「MTBを上手に活用するトライアスロン・ライフは、今後の年金暮らしにとってお金を使わず体力や運動神経を維持する健康法なんだと」軽い気持ちなんですが、周りの人は『元気やな』とびっくりされます。しかしここで有頂天になると落とし穴にはまり自滅しますので、ケガや事故に対する警戒心を怠らぬよう平常心を養う注意をしています。

そこでロードレーサーの保守点検・整備は事故防止の鉄則ですが、忙しいとつい警戒心が薄れ後回しにしてしまいます。日頃は物置に保管してますが、レース前の2・3ヶ月前に出してきて、しっかりチェックします。怖い乗り物だと思っていますので、乗り始めはいつも億劫になります。従って、競技指向型のツーリングや実力差がある人との練習や集団走行はしません。相手に合わせマイペースを守れないので集中できず事故に繋がりやすいからです。熟知したお気に入りのコース以外で乗らないようにします。私の場合、表六甲ドライブウエーを記念碑台まで登り、時には芦有までの走り、タイムを測って記録します。

宮古からの帰りの神戸空港から、バイクの入ったダンボールを輪行しポートライナー、阪急電車を乗り継いで帰りました。これもトレーニングチャンスを生かし経費節減でき、輪行ノウハウの体験学習、そして老化防止策になります。折角辛くて厳しいレースを完走してストロングマン称号を得たのですから、これくらいのことは実践しなければと思っています。疲れたら上手に休息して回復させる、こうした事も場数を踏むと知恵になり、また現役主義をまっとうできる信念が養えます。サラーリーマンだ、都会生活だからといって妥協したり、世間の目や常識を気にしていては、大切な事を見失ってしまいます。自分らしいスタイルを追求するには、天上天下唯我独尊で良いと思う。

例えばランの練習の場合、スポーツウエアに着替えるのが邪魔臭かったら、普段着で走りに行けばよい。私の場合、時間を決めて毎日規則的にとか定期的に練習するのが嫌いなので、買い物や、人に会いに行く時など日常生活の移動をすべてトレーニングチャンスとして生かす、つまり季節に合わせて必要な肉体労働をする百姓的ライフスタイルが望ましいと思っています。しかし通勤バイクは毎日乗っていたのですから、これでは運動量がちょっと少ない。そこで短時間で帰ってこれる山登りを加えます。有り難いことに近くに歴史的に由緒のある摩耶山の青谷登山道があり、その中腹の不動の滝まで週に2・3回ほど行くようにしています。早朝ならラジオ体操をする元気なお年寄りに出会える往復2時間ばかりのコースで、鳥や花、木々そして猪と四季折々の自然に触れることもできて、時にはご来光も見れますのでトレーニング環境には大変恵まれていると思います。






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