
第256号
「奈良マラソン」で考えたマラソン大会の在り方!
2010年12月10日
AAC会員
野上 亨氏
「平城遷都1300年記念奈良マラソン」に参加された皆さん、大変お疲れ様でした。
本大会、来年も開催が決定いたしました。そこで、昨今のマラソンブームに乗って
新規に開催される大会が増えてきたことについて、マラソン大会の在り方について
考えてみました。まずは、ランナーの皆さんは、それぞれにマラソンに参加される時
のポイントをお持ちだと思います。私が参加する時のポイントは、以下の4つだと
思っています。
1.開催時期
2.コース設定
3.参加費
4.運営
このポイントに基づいて、今回の「奈良マラソン」を評価していきます。そして、皆さ
んにマラソン大会の在り方を考えて欲しいと思います。
評価の前に、「奈良マラソン」の開催意義を、「平城遷都1300年祭
実行委員会」が
昨年10月にプレスリリースした理念を、公式ホームページから引用し、この理念を
前提に以下に述べていきたいと思います。
平城遷都1300年祭を契機として、マラソンを通じて幅広くスポーツ
の振興を図るとともに、奈良の魅力を県内外に広くアピールするた
め、奈良陸上競技協会が中心となって(一部略)マラソンを実施する。
1.開催時期
今年の日程からすれば、来年は12月第1週(4日)が有力です。ただ、この時期は各
地で既にマラソンの開催がピークです。そこへ、来年は、10月30日に「大阪マラソ
ン」、11月20日に「ひょうご・神戸マラソン」が新規参入します。恒例の「福知山マラ
ソン」は11月23日から日程を移動する可能性は大きいと考えられます。また、その
あおりで、他の既存大会が日程変更する可能性もあります。
今年の「奈良マラソン」は第1回ということもあり、5日間で締め切りになりましたが、
次項で述べる各項目を考えると、今年参加したランナーが、どのくらいの割合でリ
ピーターとなるのでしょうか? 大会が長続きするためには、いかにリピーターを獲
得できるかがポイントになります。この点については、以下の項目と合わせて見る
と不透明と言わざるをえないと思います。今回は、平城遷都1300年祭の締めくくり
として、この時期の開催でも多くのランナーの参加がありましたが。
2.コース設定
奈良の魅力をアピールするためであれば、もっと世界遺産の名所を巡るなどのコー
スが必要であったと思います。スタートしてからの約10kmは、平城京朱雀門や、東
大寺大仏殿と名所前を通りますが、その後は一般のマラソンと変わりない郊外の
道路を南下し、天理市内の天理高校内で折り返すコースは、奈良の魅力アピール
に繋がりにくかったでしょう。加えて、細かいアップダウンに、奈良市と天理市の境
にある峠越えは、記録を狙うランナーには不利です。
上記理念に沿えば、来年の「大阪マラソン」の方が、「これが大阪やねん」というコ
ースですし、「ひょうご・神戸マラソン」は、「長田地区など阪神淡路大震災で、大き
な被害を受けた地域が復興した姿を見て、感じて欲しい」というコースになっていま
す。新規に開催する場合には、他の大会より意味(魅力)あるコースでなければな
りません。
3.参加費
今回の「奈良マラソン」の参加費は8,000円。恐らく、「東京マラソン」を参考にして
設定したと思われますが、前項のコース、そして参加人数が「福知山マラソン」と大
きく変わりないことを考えると高いというのが本音です。フルマラソンで言えば、現
在の参加費は概ね4,500円前後です。単純に距離で割ると、100円/1kmというとこ
ろでしょうか。ゴールでは、完走タオルをもらえたり、恐らく吉野杉であろうと思いま
すが、裏に木材をあしらった完走メダルをくれたりと、他の大会と違った工夫も感じ
られましたが、スポンサーに名を連ねた企業を見ると、日本全国に名だたる企業も
多く、それを勘案すると、やはり高いと考えざるをえません。
4.運営
一言では言いきれない部分がありますので、再分化して評価したいと思います。
(1)会場と受付
当日の混乱を避けるためと思いますが、フルマラソンと10kmは前日の
みの受付でした。ランナーは、土・日と通わねばならず、時間と交通費
が掛かってしまいます。会場を見て分かったことですが、確かにスペー
スが少なく、全ての部門を当日受付で行うには手狭だと感じました。
それであれば、せっかく「平城遷都1300年祭記念」を謳っていますので、
思い切って平城宮跡の広大な場所を会場にする等の工夫ができたと
思います。奈良市の中心部からは離れますが、バスでピストン輸送す
るなどすれば問題無いと思います。ランナーとしては陸上競技場スター
ト、ゴールというのは、確かに気分がいいのですが、今回の鴻ノ池陸
上競技場は、近鉄奈良やJR奈良から中途半端に離れた場所でした。
(2)遠隔地からのランナーへの対応
12月と言えども、まだ初旬で奈良は観光シーズンです。今回参加した
遠隔地ランナーが奈良市に宿泊できず、京都や大阪で泊ったケース
が出ました。私が当日の懇親会で知り合った神奈川県の女性は、大
阪難波に宿泊されていました。エントリーした18,941人の中から、近畿
二府四県のランナーを単純に引けば4,342人。もちろん、近畿地方で
も宿泊が必要な参加者もあったでしょうし、その逆もあると思いますが、
同伴者を考慮して、約5,000人〜6,000人の収容が全てできなかった
現状は、大会関係者の思惑とは違ったと思います。当日走っていて、
実際に、東大寺周辺では、多くの観光客を見かけましたし、観光バス
も多く止まっていました。その事実に納得しました。実行委員会として
は、遠隔地ランナーに前日観光してもらい、宿泊してもらって、「お金」
を落としてもらいたいとの狙いがあったかもしれませんが。もちろん、
会場の物販ブースで、お土産などを買う姿は多く見られましたが、金
額的にはわずかだったでしょう。経済効果についてはあまり大きなも
のでなかったと考えられます。
(3)スタート時間
フルマラソンのスタートは9時。スタート時間にしては、早かったと思い
ます。せめて9時30分であれば余裕が持てました。確かにゴール制限
6時間となると、ゴール制限を過ぎても手前の関門を通過して入るラン
ナーもいます。加えて、日没時間を考えれば妥当かもしれませんが、
改善して欲しい点です。芦屋からでさえ、4時50分の一番電車で、尼
崎・近鉄東花園で乗り換えて近鉄奈良着が6時28分。会場には7時に
は着きましたが、準備やストレッチをしていると、アップの時間にほとん
ど余裕がありませんでした。
(4)大会中の運営
第1回の大会は”当たり、ハズレ”があり、”ハズレ”の場合は、苦戦す
ることがありますが、今回は合格点を付けても良いと思います。沿道
の整理はしっかりしており、歩道沿いだけでなく、センターライン側に
も、間断なくボランティアの皆さん(地元自治会と思われる方や高校生
の方)が立って、沿道整理をしながら「ファイト!」とか「ナイスラン!」
などの声を常に掛けてくれ、特に高校生の皆さんはハイタッチをしなが
ら元気をくれました。これは、他の大会では無かったことで、終盤の走
りに力が出ました。そして、中学や高校の吹奏楽演奏や、和太鼓の演
武が行われていて、これも元気をくれました。終盤に回りを見ても、歩
くランナーが少なく、歩くのとほとんど変わりないペースでも走っていた
のは、沿道の応援の賜物ではなかったのでは、と考えます。
ただ、エイドですが、私は前半写真を撮ったり、エイドで話をしたりと
“遊んで”いましたが、復路に入って、30km辺りから真剣に走りました
ので、給食は30kmエイドでバナナとパンを食べた以外、給水のみで
乗り切りました。しかし、後半にもっと給食が欲しかったという意見も聞
きました。確かに、後半の給食は2ヶ所だけでした。本当にエネルギー
を必要とするランナーには辛かったと思います。また、エイドの数がち
ょっと少なかったかと思います。当日の最高気温は、奈良市で約17℃。
私は暑くは感じませんでしたが、途中で救急車が来たり、ゴール後に
担架で運ばれるランナーを見ると、熱中症を起こした可能性があります。
エイドがもう少し多く必要だったかもしれません。もう一つは、距離表
示です。表示看板が小さく、多くのランナーが走る中では確認しにくい
と思いました。私は、GPSで距離表示ができる時計を付けていました
ので、見れば距離が分かりましたが、多くのランナーがそうした時計を
持っているわけではありません。
以上、「奈良マラソン」に参加して考えたマラソン大会の在り方です。
私は来年も参加する予定ですが、皆さんは、どう思われますか?
(大会開催日:2010・12・5)