
第564号
つれづれに思いつくまま(1)
===ウェーブスタートを考える===
2016年7月6日
AAC会員
鎌苅 滝生氏
昨2015年11月22日に開催されたつくばマラソンにおいて、ウェーブスタートが導入さ
れた。ウェーブスタートとは、グループ化した集団が一定の間隔で波のように次々とス
タートする様子が命名の由来である。いくつかのハーフマラソの大会や雑誌ランナーズ
を発行する(株)アールビーズが主催する東京や大阪の30kmでウェーブスタートが採
用されているし、トレイルランやトライアスロンなどのかなりの大会で実施されている。
つくばマラソンの大会運営委員の一人である筑波大学の鍋倉賢治教授によれば、国
内のフルマラソンでは初のウェーブスタートの導入であるとのことである。つくばマラソン
で導入されたウェーブスタートの内容を紹介したうえで、これについて考えてみたいと
思う。以下は主催者発表の競技方法の抜粋である。
『(略)
各ウェーブのスタート時間
◦第1ウェーブ : 9時00分 (スタートブロック:A・B)
◦第2ウェーブ : 9時10分 (スタートブロック:C・D・E)
◦第3ウェーブ : 9時20分 (スタートブロック:F・G・H)
グロスタイムについて
グロスタイムは、各ウェーブの号砲により測定します。例えば、第2ウェーブのラン
ナーは、第2ウェーブのスタート時間からグロスタイムの測定がスタートします。
ネットタイムはこれまで同様、スタートラインを超えた時から測定がスタートします。
尚、該当のウェーブよりも早いウェーブからスタートした場合は記録が出ないこと
となります。例えば第3ウェーブのランナーが第2ウェーブからスタートした場合は、
記録が出ません。またこの場合、完走証も発行されません。
(略)
第2ウェーブのランナーが遅刻して第3ウェーブからのスタートとなったとしても、
グロスタイムは第2ウェーブのスタート時間からの測定となります。 』
従来の一斉スタートによる問題点として、特にマンモス大会では、スタート直後の渋滞
によるタイムロスの発生、スピードの異なるランナーの混在による接触やそれによる転
倒リスク等が指摘されてきた。
ウェーブスタートは、海外のレースではポピュラーなスタート方式のようであるが、つくば
マラソン主催者は「ウェーブスタートを実施する理由は、スタート時、及びコース上の混
雑を緩和するためです。」と述べているが、導入に至った詳細な経緯については語って
いない。
大会終了後、大会実行委員会がこのスタート方式導入による効果を発表している。
まず、特に混雑する5km地点における5分ごとの通過人数を、前年大会の数値と比較
している。最多通過人数は、前年大会が2738名、2015年の大会は2469名となり、
コース上の混雑が緩和されたことが判明した。定員が13000名から15000名と200
0名増加しているにもかかわらず、ウェーブスタートの効果が大きいとしている。
次に、グロスタイムとネットタイムの平均の差を比較している。それによるとゴールタイム
3時間台のランナーのグロスとネットの差が1分40秒短縮され、同じく4時間台は2分
30秒、5時間台は3分40秒の短縮が実現している。グロスとネットの差の短縮は、当
然の効果であるが、それ以上に効果的と感じとれたのは、スタート直後の混雑の緩和
ではなかろうか。大会終了後のアンケート調査でも、92%が満足していると回答を寄
せているが、ランナーの実感であろう。
繰り返しになるが、本方式導入による利点は、スタート時のロスタイムの短縮並びにス
タート直後混雑と走行中の混雑の緩和、それによる安全性の確保を図ることができる
ことである。さらには、トイレの混雑緩和も挙げられる。大規模な大会でのスタート前の
トイレ待ちの長蛇の列を見かけることは稀ではない。ウェーブスタートの場合、集合時
刻も当然一定間隔となるので混雑の緩和が期待できる。トイレを十分に準備して待ち
時間の短縮に努めている場合には、仮設トイレの設置数の削減につながる可能性もあ
り、運営側にとっても経費面でのメリットとなる。
つくばマラソンにおける初めての導入は、10分間隔で3組のウェーブスタートとなった。
しかし、1組が2900名、2組が5500名、3組が6600名で、まだまだ多人数でのスタ
ートといわざるをえない。ウェーブスタートの導入に際しては、実行委員会は検討を重ね、
間違いのないようにスタートにするために注意喚起をされたようであるが、前述の鍋倉
教授は、交通規制の関係で沢山の組を作ることができず、結果として一組の人数が多
くなってしまい、ウェーブスタートの利点が薄まったとしている。しかし、1万人以上が号
砲を合図に一斉にスタートしていた従来方式に比べて、よりスムーズで快適なスタート
になり、安全性も高まったことは、高く評価すべきものと思う。