第625号富士山頂で味わう “年間グランドスラム”


第625号
富士山頂で味わう “年間グランドスラム”
2017年8月18日
AAC会員
堀内 信弘氏

この度、市民ランナーの“グランドスラム”なるものを達成したので、少し自慢するた
めに投稿させていただくことにした(笑)。
ご存知のかたも多いかと思われるが、「フルマラソンでサブスリー」、「ウルトラ100
kmでサブテン」、「富士登山競走山頂コースで時間内完走」の三種目制覇することを
“グランドスラム” といい、さらにこれらを同暦年の一年間で達成することを“年間グ
ランドスラム” という。

ただ、このタイトルはどこかの協会等が認定したり表彰してくれたりするものではなく
100%ただの自己満足であり、また、これくらいのことなら簡単に出来てしまいそうな
強者ランナーにとっては、チャレンジ意欲すら湧いてこないタイトルかも知れない。

しかしそこのところ、小生にとっては簡単に達成できるとも限らないタイトルだと感じ
ていたこと、また、挑戦せぬまま爺さんになってから「あれくらいのこと、その気にな
りゃ~やれたんぢゃがの。」と、ほざいたところで信じてもらえるやらどうやら分から
ずホラ吹き扱い、鼻で笑われる場面を想像すると癪に障ったので、加齢が進行して
タイトル獲得が怪しくなる前にチャレンジしておく気になった。(ちなみに現在52歳)

そんな訳で2017年に入って別大と篠山でサブスリー、次いで水都ウルトラで初のサブ
テン、そして先日の富士登山競走山頂コースを辛うじて完走したことで“年間グランド
スラム”を達成することができた。

振り返って感じることは、特に拘ってはいなかったとはいうものの、それが“年間”で
あることの難しさ。小生の場合はたまたま偶発的にグランドスラムが一年間に集約
された面もあるので正味の価値があるとは言い難いが、始めっから“年間”を狙うと
なると、それには安定した実力の裏打ちは勿論のこと、三種目すべてを故障なく、ま
た悪天候による大会中止等もなく、練習段階から家族の協力、職場の理解、また、
その人の持つ運等、様々な要素がバランスよく整わなければなかなか達成できるも
のではないという印象を受けた。

ついでにこれもたまたまの偶然だったが、最後に達成した種目が富士登山競走とな
ったことで “年間グランドスラム” の栄冠を、日本の最高峰 “富士山の頂” で掴みと
る・・・というロマンチックな幕引きとなったことも、自己陶酔と美酒を煽るための
格好の材料となった。

追記
ここらで筆を置こうかと思ったが、少しなめてかかっていた最後の種目「富士登山競
走」には予想以上に苦しめられたこともあり、命拾いをしたような感慨深いフィニッシ
ュとなったので、投稿ついでにその内容もダイジェストに綴らせていただくことにした。
(ついでといいながら、こちらのほうが長文に(^_^;)。)

【大誤算だった五合目まで】
富士登山競走山頂コースの制限時間は4時間半であり、それなりに練習も積んでき
たので余裕で完走できると予想はしていたが、だからといって小生にとって少しハー
ドルの高そうなサブフォーなんてものを狙ってリタイアリスクを発生させるよりは、
やはり年間グランドスラム達成を確実にしたかったので、前半はペースを抑えて難所
となる後半に備える策をとることにした。

ところがそんな守りの姿勢が仇となり、知らぬ間に実は完走すら怪しい集団に混じっ
て悠々と五合目を目指していたようで(マラソンのように途中経過タイムがつかみにく
い)、さらに五合目関門直前には大渋滞に巻き込まれるなどして、過去二年は優に2
時間を切って五合目を通過していたにも拘わらず、2時間13分以上もかかって通過
するという、前途多難な五合目関門通過劇となった。

あるデータによると、五合目関門通過タイムが2時間8分の選手の完走率が50%、
また、2時間15分を超えると一人も完走できなかった年もあるらしいので、今回の2
時間13分台という通過タイムはかなり深刻。周囲にいる選手の殆んどが完走できな
い運命なので、なんとかしてこの集団から抜け出さなければならなかった。

【とにかく我慢 我慢の八合目まで】
五合目までを抑えてきたのだからそこからは余力で挽回できてもおかしくなさそうな
ものだが、久しぶりの真夏の大会参戦ということもあってか滝汗かいて立派な(笑)
脱水症状に。山岳コースに入ってからというもの脹脛と太腿の痙攣を繰り返し、酷い
ときには上半身のけ反って動けない状態となり、天を仰ぎながら 『これで万事休す
か。』 と何度思ったことか。

そうなってくると、どんなタイミングで白旗をあげれば格好がつくのか・・・という
「負けざま」にまで考えが及んだが、そんな名案などでてくる筈もなく、せめて自分の
意思で競技を中断させてしまうと後々挫折感と後悔の念に苛まれることになるので、
身体が勝手に拒絶反応を起こして動けなくなり『あのときはどうしようもなかったんだ。
』 と思えるようになるまでは、自分の意思で競技を中断させることなく 山頂目指して
前に進みつづけようと決めた。無様ながら攣っていなかった“前足”(笑)もできるだけ
使い、四つん這い歩行を多く取り入れるなどして“後足”への負担を軽減させる苦肉
策もとった。

そして八合目の関門を通過した際の印象的だった声援が 「頑張ればまだいけるか
も!」。 実はこの声援、弱り切った身体には少々残酷で、「頑張れば」という条件付
きなのに 括りは「絶対いける」ではなく 「かも」(笑)。ネガティブにとらえると「頑張
ってもだめかも」と同義語。その他ストレートに「山頂は厳しいでーす。」との声もあ
った。
そんな現状を伝えてくれる“悪気はないが現実的過ぎる声援”には悲壮感を煽られた
が(笑)、マラソンでもなんでも関門なんてものは、そこを通過さえすればその後はそれ
までの平均的ペースを維持すればフィニッシュできるよう設定されているだろうから、
焦ってペースを上げる努力をして痙攣を誘発させるより、安定したペースを維持する
努力に終始した。

【どん底から起死回生の山頂フィニッシュまで】
そんな思いでようやく八合目とフィニッシュの中間地点辺りに差し掛かった頃、山頂
方向から「あと、じゅうごふぅーん!」という声が聞こえてきた。そのとき小生の真後ろ
をずっと並走して、周囲の声援にも いちいち「ありがとうございまーす!」と返してい
た元気印だった選手、そんな選手が一変して「とても15分じゃ無理だぁ~。」と力なく
弱音を吐いたのが耳に入ってきた。ドキッとして重たい頭を上げて山頂方向を見上
げてみると、そこには日本の最高峰富士山のてっぺんがクッキリとみえてはいるもの
の、そこに至るまでには無情にもジグザグのつづら折りがいくつも折り返しており、小
生の受けた印象からしても『とてもじゃないけどこれは15分で登りきれるものではな
い。』と、ここにきて強烈な敗北感を味わったことを今でも鮮明に覚えている。(どう 見
積もっても20~30分はかかるようにみえた。)

幸いこれは距離感の目測誤りによる単なる錯覚であったことを後から悟った訳だが、
そのときはタイムアウト必至と思い込んだので、『完走できないのならなおのこと、最
後まで精一杯力を尽くすことが最低限の使命。』と、小生にしては珍しく真面目な 心
境となり、その最後のつづら折りを力を振り絞って前へ前へと進み続けた。

そんな状況だったので 「あと、さんぷぅーん」 といわれたところで、その3分をどう解
釈していいのかもよくわからなかったが、そのうち周囲がザワザワと騒がしくなって
きて、なにやら「ゴールはすぐそこー!」とか「イケルイケル!」との祝福らしい声援に
変わってきたものだから、『えっ!なに?』、『嘘っ!イケるの?』と気分は一転して幸
福感マックス状態に!

それでもどれくらい時間が残されているのかよくわからなかったので、『ゴール直前で
打ち切られては堪るか!』と、まるで野良仕事で腰の曲がった爺さんが何かに追 わ
れるかのような不細工な格好でラストスパート!地獄を這う奴隷のような心境から一
転して天にも昇る気持ちになったが、それはまだ早いということで富士山頂でストップ
(笑)。フィニッシュを果たした際には感極まって顔はクチャクチャ、、、確か泣いたは
ずだが脱水で涙は出なかった。(笑)

マラソンでもなんでも駄目なときは駄目、棄権するほうが賢いと感じたときには完走
に拘らず棄権するポリシーの小生なので、今回のような結果はたまたま上手くいっ
た一例に過ぎないが、悪いときには悪いなりの状況を受け入れ、ひたすら我慢して
諦めずに歩み続けていればそのうち活路が開けてくる・・・という、モデルケースのよ
うな体験ができたので、このイメージを大切にして今後の人生で苦難に陥ったときに
はこの富士登山競走の経験を思い出し、励みにしようと思う。

それではつらつらと長文を綴ることになったがこれで本当のお終い。きっちり最後ま
で読んでくださったかた、また、適当に斜め読みしてここに辿り着かれたかたも(笑)、
本当にありがとうございました。(^・^)

(大会開催日:2017・7・28)

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