第651号 川の道512kmフットレース参戦記!


第651号
川の道512kmフットレース参戦記!
2018年5月16日
AAC会員
千原 昇氏

GW中に行われた川の道512kmフットレースに参加しました。

【川の道フットレースとは】
東京の葛西臨海公園をスタートとして荒川上流に沿って北上し、分水嶺を越えて更に
信濃川下流に沿って北上し、新潟の信濃川河口に至る512kmを走るレースです。
概ね川に沿ったコースなので「川の道」。途中、標高の高いところもありま
すが、コースにトレイルはなく、100%ロードです。

制限時間132時間(5日と半日)以内で、東京、埼玉、群馬、長野、新潟の1都4県に
至る512kmをランニングで走破する。何とも夢とロマンに溢れたレースです。この夢と
ロマンに惹かれ、これほどの長距離レースにも関わらず参加希望者が130人の定員
を毎年オーバーしてしまうのですが、今年も幸いにして選考の壁を突破し、3年連続
の参戦を果たすことができました。

【事前準備】
長いレースなので、事前の準備がとても大切だと考えています。
一つは食料。レース中はどこで何を食べてもOKですが、都会から離れるとコンビニ
もまばらになりますし、山中に入ってしまうと数十kmにわたって全く店がない区間も
あります。そこで、大会から配布される地図に、コンビニやお気に入りの店を調べて
事前に記載しておき、食料の購入は計画的に行います。

もう一つが睡眠。大会では3か所のレストポイント(ホテル、体育館など)が用意され、
そこでは風呂に入れて着替えもできて睡眠も取れるのですが、睡眠に関してはそれ
だけではとても足りません。道端でごろ寝でもいいのですが、それでは十分に眠れな
いでしょう。お金をかけてビジネスホテルを予約する選手もいるほどですが、私は事
前にネットカフェを調べておきます。ネットカフェは床がフラットな部屋もあるのでし
っかり睡眠を取ることができます。

そして、肝心の体力をつけるための練習。スピードはいらないので走行距離に重点を
置き、レース1か月前には土日を使って両日とも100km走るのを目標として(あくまで
目標で、実際には1日80~90kmが精一杯ですが)武庫川~甲子園浜の10km区間を
何度も往復します。この区間は信号がないのでノンストップで走れますし、景色がほ
とんど変わらないので、体力と同時に根性も鍛えられます。 例年、この練習を行い
ます。

ただ、今年はこの100km練習を行いませんでした。というのも、私の最大の目標であ
るTJAR(トランスジャパンアルプスレース)の予選会参加資格(フルマラソン3時間20
分以内or100kmマラソン10時間30分以内)を今年はまだゲットできていなかったため、
無謀でしたが川の道フットレースの1週間前の水都大阪100kmマラソンに急遽エント
リーし、最後のチャンスに賭けました。練習も川の道のことはあまり考えず、よりスピ
ード重視にしていました。

しかし、結果は13時間55分と散々。100km走った疲労とTJARに出られないことが確
定したショックで心身虚脱状態になってしまいました。3日間ほどこの状態が続きまし
たが、川の道でしっかり走ろうと思い直し、大急ぎで地図にコンビニ場所を記入し、
衣類、行動食をそろえて本番に臨んだのでした。

【レース本番】
振り返ると、512kmの行程の全てに思い出があるのですが、全部書き出すと膨大に
なり過ぎるので、特に印象に残っている所だけ記載します。

◎スタート→第1レストポイント(国民宿舎両神荘の体育館、151.8km)
4/30の9時、葛西臨海公園を130人がゆっくりと、しかし強い決意を秘めてスタート。
私の決意は昨年のタイム(122時間45分)を切ること。最終日5/5の11時45分までに
ゴールすることを目標としました。

熊谷まで延々と続く約80kmのサイクリングロードを走りますが、カンカン照りで暑い。
水分を十分に取り、私設エイドにもお世話になりながら、ペースはできるだけ低速(
キロ10分前後)で安定させる。疲労はあまりなかったものの、100kmも進まないうち
に早々に両踵にマメができてしまいました。

マメはとても恐ろしいのです。2年前に初出場した際は足裏全体に広がって激痛で走
れなくなってしまいました。絶対に拡大させたくないので速やかに対処します。具体
的には、マメのぶよぶよした皮を安全バサミで全て切り取り、上からキズパワーパッ
トを貼ります。これでマメが広がることがなくなり、経日的にはむしろ治ってくるの
です。

秩父の上野町交差点(132.9km)には5/1の7時半に到着。去年より1時間ほど遅い。
上野朝交差点横にネットカフェがあるのですが、遅れているので今年は立ち寄らず、
一気に両神荘まで走ることを決意。両神荘には11時頃に到着。寝ずに26時間走り続
けたのでフラフラです。すぐに風呂に入って寝ました。

◎第1レストポイント→ぶどう峠→第2レストポイント(小諸グランドキャッスルホテル
259.6km)
4時間寝てスッキリした状態で、5/1の16時過ぎに出発。険しいアップダウンを経て神
流町の何もない夜の田舎道を通過すると、192km地点からぶどう峠(207km、標高
1510m)まで長い長い上り坂にります。このレースの難関の一つです。

登り基調でダラダラ長くてしんどい上に、夜間走行で周りに何もありません。段々と
睡魔に襲われてしまいました。あまりに睡魔が酷くてフラついて危ないので、奥の手
を使います。スマホにイヤホンを付けて音楽を聴くのです。

浜省、長渕、頭文字Dのユーロビート、ありとあらゆる音源で睡魔への対処を図りまし
たが、一番目が覚めるのは松田聖子。松田聖子など普段は全く聴かないのですが、
こんな疲れた時に聞くと何故か心に沁みます。夜の夜中、前後に誰もいない山の中
で、「あーわたっしの恋は南の風に乗って走るわ―」とか・・・
「何もかも目覚めてく新しいわたっしー」・・・
などど歌いながら、長い長い坂を登りきり、何とかぶどう峠を乗り切った。

その後の過程は割愛しますが、とにかく延々と走り続けて、5/2の17時頃に小諸グラ
ンドキャッスルホテルに到着。去年より2時間近く遅い結果に少しガッカリするも、
かなり疲れているので、すぐに風呂に入って寝ました。

◎第2レストポイント→善光寺→第3レストポイント(旧三箇小学校、393.0km)
4時間寝てスッキリした状態で、5/2の22時半出発。出発後すぐに大雨に見舞われ、
夜間ということもあって気温も大幅に下がりました。後で聞くとこの天候に苦しんだ選
手もいたようですが、私は用意していたモンベルの化繊ダウンを着てモンベルの上
下ゴアテックスのレインウェアを羽織って対処できました。こう書くとモンベルの回し
者みたいですが、モンベル化繊ダウンは少々濡れても温かく、ナイスグッズであるの
は間違いないです。

またしばらくずーっと走って、5/3の10時に善光寺(316km)に到着。東京から走って
善光寺です。結構来たなーって気持ちになります。本殿まで行って参拝するのがルー
ルなので、大勢の観光客に交じって参拝していたら、見知らぬ女性から「頑張って下
さい!」と声をかけられ、テンションも上がります。

とは言え、ここまで来るとかなり疲れています。去年と同様に善光寺のネットカフェに
入り、床がフラットの部屋を予約。足裏のケアで10分強を消費し、40分ほど睡眠。
制限時間があるのであまり眠れませんが、40分も寝ると明らかに復活するのが実感
できます。

復活した体で走りだし、長野県北部の山々が連なる地区(340km前後)に来ました。
この辺りは「日本の原風景」と言われている場所で、壮大な山々と千曲川のコントラ
ストがとても美しい区域です。今年もこの景色を見ることができて満足な気分になりま
した。私はレースに出るからには成績にこだわり景色などどうでもいいタイプですが、
川の道に関しては、この風景を見るだけでも参加した価値は十分あると思えてしまい
ます。

360kmから第3レストポイント390kmまでは強烈なアップダウンが続く、このレースの
難関でもある区間ですが、今年はこの区間に入る前から睡魔に襲われました。音楽
で対処を試みるも、今後は長渕も浜省も松田聖子も効きません。フラフラになりなが
ら、「寒いけど道端で寝ようかな…」と考えながら走っていると、コインランドリーが
見えてきました。入ってみると、暖かくて気持ちいい。そのまま30分ほど寝て復活。
コインランドリーも休憩に有効なことが分かりました。

そして、360kmからのアップダウン。ここは一昨年も昨年も苦しんだ区間ですが、今年
はペースも安定でき、さほど苦しまず進めました。昨年と比べて進歩した点です。
このアップダウンで遅れを取り戻し、去年とほぼ同タイムでレストポイントの旧三箇小
学校に到着。もうフラフラです。すぐにシャワーを浴びて寝ました。

◎第3レストポイント→ゴール(ホンマ健康ランド、512km)
旧三箇小学校でもこれまでと同様に4時間睡眠の予定でしたが、疲れすぎて目覚まし
用のスマホアプリ(バイブレーター)を作動させる前に寝てしまったようで、目が覚め
ると6時間寝てしまっていました。2時間など誤差だと言い聞かせて、落ち着いて走り
出しました。しかし、実際にはかなりペースアップしていたようです。焦りの気持ちも
あったかも知れません。

これが響いてしまったか、残り100kmの地点でとうとう体が限界に達してしまい、ピタ
ッと足が動かなくなってしまいました。ただ止まっているわけにもいかず、何とか走る
動作を試みるものの、とうとうキロ12分が切れなくなってしまいました。残り100kmは
本当に苦しかった。道端の歩行者にも抜かれてしまう状態です。ならばと歩いてみた
ものの、歩くと更に遅くなってしまうので、とにかく走る動作を続けなければと決意し
て、キロ15分かかってもただただ走りました。

5/5、16時過ぎた頃、目の前に信濃川河口が見えてきました。ゴールはもうすぐ。
既に昨年のタイムを過ぎてしまっていますが、そんなことはもうどうでも良くなりまし
た。そして、129時間35分13秒(5/5、18時35分)でゴール。今年も自分の足で新潟ま
で走ることができました。

【アフター川の道】
レース後、毎度のことですが疲労がなかなか抜けません。1週間ほどは疲れ切った
状態がずっと続いていましたが、先日はカヌーアスロンのボランティアも無事に務め
られたので、ようやく回復傾向に向かっているようです。
振り返ると、とても長く厳しいコース。しかし、それを克服して完走した時、十分すぎ
るほどの充実感で満たされます。可能であれば、来年もそれ以降も出続けたいレー
スです。   出走者:157人  総合順位:64位/127人中   完走率:61%
(大会開催日:2018・4・30~5・5)

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