
第518号
完走率27.5%!? 死闘の第1回山中温泉トレイルレース!
2015年8月8日
AAC会員
門田 元氏
真夏のデスマッチ、第1回山中温泉トレイルレース出走してきました。距離71kmに対
し、累積標高は6,000m以上はあったとか。(笑) この距離と累積標高のバランス、あ
まり聞いたことがありません・・・。勇敢なトレイルランナーが388人集結しましたが、生
還者はわずか107名・・・。281人がリタイヤという信じられない結果に・・・。
結果は11時間27分、出走者388人中の総合6位、そしてエイジ優勝と、中年の無名ラ
ンナーの快挙です(笑) まずは、応援やサポートしてくれた家族、トレラン仲間、AAC
メンバー、友人、大会ボランティア&スタッフ、そして山中温泉の地元の人たちに感謝
です。ありがとうございました!
最初に、このレースは私のトレラン仲間が地元の温泉街を活性化させようという思い
の中、今回の主催者であるOSJに掛け合って実現させたレースなのです。関西主要
のトレランショップに一緒にビラ配りのPR活動に行ったり、エイド内容の相談を受けた
りと、微力ながらサポートもさせてもらった思い入れのあるレースでした。しかし直前に
なり、レース概要(コース、距離、制限時間)が二転三転とし、一時は84kmまで延長す
るとの情報や、完走率も20%を切るのではないかとの噂も広がり、ベールに包まれた
まま当日を迎えるという前代未聞のレースとなりました。
そんな真夏の灼熱ロングトレイルレースに一体誰がでるんでしょうかね。(笑) はい、
いてました、いてました。AACからは小澄さん・多田さん・大村さん・青木さんに私くし。
オレこそが『LOVE! HARD TRAIL』だと豪語する豪華メンバーが集結です。まるでア
ルマゲドンで小惑星に核爆弾を埋め込みに行くスペシャリストが集まったようで、行先
が宇宙と温泉街の違いくらいです。
向かう車中では、装備をどうする? 補給はどうする? さらに、日焼け止めは塗る?
車のカギは誰が持って走る? おにぎりは腐るかな? までの熱い論議が・・・。
そして、福井県を通過する頃には、地元出身の多田さんによる嶺北・嶺南の違いにつ
いての車内ケンミンSHOWの始まります。言い忘れてましたが、運悪く私だけがまさか
の夜勤明けです・・・。
さすがにそんな熱い議論と座学が面白おかしく無視できず、ほぼ一睡もしないまま山
中温泉へ向かいます・・・。ココロとカラダも衰弱状態の中、道中では多田さんアレンジ
の福井B級グルメ『ソースかつ丼』の聖地・敦賀ヨーロッパ軒本店へ!幸いエネルギー
チャージはできましたが、観光気分でますます寝れません・・・。結局その状態のまま
決戦の地・山中温泉に夕方到着し、前日エントリーを済ませます。
そしていよいよ情報が錯綜し、ベールに包まれていたレースの概要説明会です!
さすが! ここはトレラン経験豊富なメンバーたち!誰も説明会には出席しません。(笑)
満場一致で最優先は温泉と睡眠です。そして夕食を済ませ、装備を整えているうちに、
相部屋になった内田さんという方が説明会から帰ってきたので、説明会の内容を聞く
という何とも合理的なメンバー。聞くだけ聞いて20時過ぎにはさっさと就寝。到着して
まだ4時間後のことです。そして相部屋・内田さんは可哀想に、暗がりの中、すり足で
明日の準備です。
翌朝は3時に起床、5時に会場入り、5時半スタートです。結局正確な距離、エイドの情
報が無いまま、5人一緒にスタート地点の前方に陣取ります。そして青木さん、すぐ近
くにあったトイレに気付いたのか、覗きに行っただけですぐに列に戻って来たのです
が・・・ えっ・・・! アウト・・・? 最後尾スタートです。スタート10分前の悲劇でした。
厳しい! OSJルール!
ここからは、ちょっと真面目な話になりますので、興味のある方だけでけっこうです。(笑)
今回のレースですが、1ヶ月半後のUTMFの予行演習ととらえてたので、UTMF用に揃
えつつあった新しいギアチェックや補給食の味見やタイミング・ペース配分・装備の軽
量化・心拍の使い方などが大きな課題でした。
【シューズ】
買ったばかりの『スポルティバ・ミュータント』 事前に練習で1回履いただけで挑みま
した。スポルティバはホールド感が抜群で、高いプロテクション性能でとにかく丈夫な
ので一番のお気に入りです。最近は片足200g台が主流になってきてますが、私の場
合はロングトレイルなので片足300gを超えてでも頑丈さを優先します。
【ザック】
これも買ったばかりの『UD・SJベスト7L』 事前に練習で1回だけ装着しただけでした。
今まで中・長距離レースでは、同じ『UD・PBベスト11L』を使用していましたが、長丁場
では本体自体の重さに加え、ついつい詰め込んでしまう性格で重くなっていたので、
少しでも軽量化を追求しようとの考えで小さくしました。ロングのトレイルレースでは、
少しでも削れる部分は削る事が重要だと思っています。当然、大会側が決めた必携
品(今回はヘッデン・熊鈴・水分1L)は装備しますが、それ以外は極力切捨てます。
携帯電話も予備電池もレインウェアもそこそこの重さと容積なので、装備から外しまし
た。勿論、何かあった場合は自己責任という認識で。
【補給食】
これはいろいろと熟考しました。トレランの1時間の消費エネルギーは、(体重+ザックの
重さ)×8kcalを基準値としています。(わたしの場合は約500kcal) 今回は予想タイム
を12時間と想定し、6,000kcalのエネルギー消費と見積りました。そして、レース前のカ
ーボと朝食によって、スタート時点ではカラダが貯蓄できる最大の2,000kcalを保持し
ているという前提で、レース中は4,000kcalが必要という計算でした。
しかし、さすがに4,000kcal分の補給食は持てません。ジェルに換算すると約33個分で
す・・・。それでもジェルは固形物が消化吸収に90分かかるのに対して、わずか15分
でエネルギーになってくれます。ですから、ジェルだけは必ず45分~60分に1個摂取
することを心掛けました。
最終的には、ジェル系×15個、ゼリー系×4個、ブロックグミ系×2個、ドライフルーツ
など合計約2,800kcal分の補給食と、その他、水に混ぜて飲むスティックタイプの、塩
熱系サプリ、回復系サプリ(ベスパ・メダリスト)、整腸系サプリ(マグマ)を装備しました。
結局、固形食はほぼ装備せず、エイドのバナナや糖エネルギー以外の体脂肪エネル
ギーの有効利用にも期待。これらのおかげでザックの収納は7Lでも十分余裕ができ、
過去同クラスのレース時よりも格段に軽くなったと実感。
【レース編
さて、いよいよレーススタートです。スタート直後は40位くらいだったでしょうか。なんと
なく出走数の10%圏内で位置取りしようと、焦らず我慢していく作戦でいきました。早々
に水無山(350m)を登りますが、やせ尾根に岩場激下りと最初からパンチの効いたトレ
イルでスタートです。そして、下りの最後で膝に痛みが・・・。一旦ロードに出て膝を触
りながら走っていると併走していた選手が『蜂に刺されましたネ?』と。『ボクも刺され
ましたけど、スズメバチではなかったですが!』と。それにしてもスタート30分にしてモ
チベーションダウンです。
そして、続いて間もなく六甲山より少し高い富士写ヶ岳(941m)の急登と、テクニカルな
下りを経て第1関門(19km)に到着。このあたりで20位くらいだったのでしょうか。予定
通りの間隔でジェルも補給し、下りも無理をしなかったので、まだまだカラダも軽く最小
限の消耗具合でした。
そして前半のクライマックス小大日山(1.198m)へ。第1関門から1,000mアップの長い
激坂登りを経てアップダウンを繰り返しながらの下りです。その上、この間次の第2関
門までは19kmもあり、給水ポイントは一切ありません。(昨年のロングレースでもほ
ぼ同じような条件を経験し、案の定水分が枯渇してしまい、コケだらけの沢水を飲む
苦い経験あり) 今回はボトル500ml×2本の常時装備に加え、この区間の攻略用に
500mlの空ボトルを用意。しかし、第1関門を出て2~3km進んだところで、空ボトル分
の給水忘れに気付き、精神的にショックを受けます・・・。1,000mのアップダウンに1Lの
水で耐えなければいけない状況に・・・。
それでもジェルだけは忘れずに摂取し、一応は得意の上りで上位選手を一人ずつ拾
いながら進みました。ここまでくると、顔や名前の知っているメジャーレースのトップラ
ンカー選手たちもちらほら。意外にも上位陣が息があがっているのに驚き、それに比
べて私の方が比較的楽な状態だと判断できました。はい、心拍のコントロールを意識
的にしながら動いてきたつもりだったので。下りの途中でボトル2本の水は完全に枯
渇しましたが、これも想定していたことだったので、パニックにならないように第2関門
を目指しました。
そして、第2関門(38km)に到着すると順位は6位くらいに。途中で9位と言われてから
は、カラダも動いたのでペースを上げました。ここからは三童子山(493m)を中心とした
稜線伝いのアップダウンが10kmほど続くのですが、その前に次のエイドの沢に行くと
ザックを背負ったまま、うつ伏せで水に浮いて微動だにしない選手の光景が・・・。
しかもゼッケンナンバー1です。この光景を見て、初めて危険なレースに参加している
のだと実感しました。
このあたりでは5位~8位くらいの選手が団子状態となり、10kmの強烈なアップダウン
の連続区間にもがき苦しみながら、抜きつ抜かれつの持久戦が繰り広げられ、まさに
死闘でした・・・。何度も迫る急登と激下りの連続で、高低図では確認できなかった最
大の難関箇所でした。風吹岩くらいの高さなのに、とにかく上っては下っての殺人的ト
レイルで不意打ちを喰らいました。途中、前方の5位の選手が熱中症とのことでリタイ
ア宣言も・・・。この方もトレイルレースでは上位常連選手です・・・。
脱落者が出たりと、奇跡的に途中5位まで順位を上げたましたが、何とか6位をキープ
して第3関門(58km)に到着。そこで文頭に書いた、この大会を実現した友人に再会し、
しばし談笑&記念写真。三童子山の稜線の死闘も終わり、リラックスムードで映画の
エンディングロールが流れてくるような気分も束の間・・・。後続の選手数名が関門に
到着し、その中には女子1位がとうとう現れました!。22歳の女子トレラン界の新星で
す。(後で調べると2014ハセツネの女子4位のエリート選手) まだ終わっていなかった。
ドラマ、映画によくあるストーリー展開です。このデスマッチ、さすがに女子には負けら
れないと、残り13kmの最終決戦です。
ここからは鞍掛山(477m)の急登バーチカルレースのスタートです。ジェルの摂取のお
かげでしょうか、意外にも脚が軽く、ここは一気に登り詰めたものの、順位を一つ落と
して7位に・・・。そしてシングルトラックを下りきって最終エイド(64km)に到着。ボラン
ティアスタッフに『あと7kmですね』と確認すると、申し訳なさそうに『あと9kmなんで
す・・・』と。 『え~~~~~っ・・・、聞いてないですよ、そんなこと!』と悲鳴を上げ
ながら6位の選手が先に出発するので、見える範囲で追走することに。ここまでやり
遂げただけでも上出来なのに、意外にもまだやる気のある自分に驚きです。(笑)
早々に6位の選手をロードで捕え、トレイル~林道~渓流遊歩道をしっかり走り続けて
温泉街へ戻ってきました。ラスト1kmあたりでまた友人と再会を果たし、途中まで併走
してもらいます。そして、ラスト500mで別れを告げ、最後の白山神社へ向かう階段登
りへ。ここでも大きな男性ボランティアが入れ替わって併走してくれます。なんて心強
い人なんだろうと、ちらっと横目で姿を確認。え~~っ・・・・!スタート時の戦闘服から
一転、Tシャツ・短パン・風呂上がり姿の大村さんではないですか!そんなオチもあり
ながら、最後の直線では7位の選手が追走してくるのが見え、猛ダッシュで6位をキー
プしてフィニッシュ!ついに、灼熱の死闘がついに終わりました・・・。
意外と楽しかった(笑)
このレースを振り返って思ったのは、トップランカーの選手でも、この時期はレースの
組み立てを間違えるとエラいことになるって事を実感しました。今回のレースは明らか
に暑さと距離を考えると、スピード戦ではなく持久戦で、速さではなくて強さと緻密さが
求められたのかと。有名どころのスピードランナーは、後半でことごとく脱落していきま
した。それに加えて、補給とエイドと心拍の使い方で差が出たかなと感じました。
あまり食べたいと思わない時でも、レース中は確実に時間を見ながら補給を実践しま
した。そして、甘いもの、苦いもの、酸っぱいものしょっぱいものをバランスよく用意した
のも良かったですね。そして、エイドの直前に補給を済ませる事を意識して、エイドに
着いてもボトルの給水とかぶり水を素早く行い、エイド・関門通過の時間短縮を心掛け
ました。
そして、ロングトレイルの場合は、心拍のコントロールが凄く大事です。歩くと走るのコ
ンビネーションを上手に考え、出来るだけ高心拍ゾーンにもっていかず、糖エネルギー
の節約をして、低心拍ゾーンでいくことによって体脂肪エネルギーを効率よく使うことが
持久力をキープするカギとなります。おかげでこの暑さにも関わらず、終始カラダが動
いてくれたので、無駄なロスが他の選手より少なかったのかと分析します。
50km以下のレースでは、累積によってはスピード勝負的なところもあったので、有力
選手には全く太刀打ちできませんでしたが、ロングトレイルになると走力・持久力・メン
タル・補給法・心拍コントロールなどの総合力の勝負です。速くなくても戦略次第によ
って、少し張り合う事ができると実感できた収穫あるレースでした。
恥ずかしながら実を言いますと、ここ3ヶ月の走行距離ですが、5月-156km・6月-167
km・7月-176kmという、ある意味安定した少ない練習量で臨んでしまいました・・・。
ほぼ平日週1の早朝と土曜日の午前の低山トレイル練10~20kmと、月1のロング練
習40km前後だけした。それでも、効率よく練習できたのかなと。心拍計は持っていま
せんが、自分の心拍がどういう状況でどうなるのかをよく感じ取りながら心拍コントロ
ール練ばかりしていたのが、レースでも実践できたのが良かったのかもしれません。
最後に、トレイルランは自然の中を走ること以外にも、自分なりのレースマネジメントを
組立てることも一つの魅力かと思います!トレイルランはとても奥が深い!
ぜひ皆さんチャレンジして下さい!
(開催日:2015・8・2)